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ニューヨーク市長選挙戦が1年前から熱い理由

ニューヨーク市長選挙戦が1年前から熱い理由

Posted December. 16, 2020 09:24,   

Updated December. 16, 2020 09:24

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マックス・ローズ米ニューヨーク州下院議員が今年9月、同じ民主党所属のビル・デブラシオ・ニューヨーク市長を「史上最悪の市長」と非難する15秒の広告を出した。市長が新型コロナウイルス対策と経済の間で一進一退する間に、外食業界への被害だけでなく新型コロナウイルスの被害も大きくなったとし、歴代市長109人の中で最も無能だと酷評した。政治広告天国の米国だが、仲間の党員をこれほど厳しく批判したケースは珍しく、話題を集めた。

2014年1月に就任したデブラシオ氏は、市民835万人の米最大都市のトップ2期目を務めているが、存在感が弱いと指摘されている。最近、おならと黒い汗論議でイメージが傷ついたが、1994~2001年に市長を務めたルドルフ・ジュリアーニ氏は、悪名高いニューヨークの凶悪犯罪を清算した。後任の億万長者当選3回のマイケル・ブルームバーグ氏は、廃鉄道と廃工場をそれぞれ新たなランドマークであるハイライン・パークとチェルシー・マーケットに変える環境にやさしい再開発などで賛辞を得た。ブルームバーグ氏が今年、民主党の大統領選候補を選ぶ予備選挙に出たのも、ジュリアーニ氏が00年の大統領選で、共和党の大統領選候補群に名を連ねたのも、市長在職時の政治功績ゆえ可能だった。

 

デブラシオ氏の代表政策は「教育の平等」。就任初年度から、英語と数学の試験だけで選抜したスタイヴェサント、ブルックリン・テックなど市内の8校の特殊公立高の入試を中学校の成績と出席に変えると宣言した。ブルームバーグ氏が増やした米国版自立型私立高のチャーター・スクールに対する支援もほぼ廃止した。特別高校とチャーター・スクールの白人とアジア系の割合が大きいという理由からだ。表向きには人種の多様性を掲げたが、初選挙の時、黒人(96%)とラテン系(82%)の圧倒的支持で当選したことを意識して、彼らが気に入る政策を出したという批判を受けた。勉強ができる生徒に対する逆差別であり、教育の下方平準化だけを引き起こすという指摘の中、入試改編案を撤回した。デブラシオ氏の座標がどこにあるかがうかがえる。

また、デブラシオ氏は公立学校の給食費無償化を導入し、社会弱者に交通券や各種支援金を支援する政策を実施した。趣旨は良かったが、財政難が深刻化した。新型コロナウイルスまで襲った今年9月には、州政府に50億ドルの救済融資を申請しなければならなかった。市民団体CAGWも放漫な財政運用を非難し、デブラシオ氏を史上最悪の市長だと批判した。

 

さらに大きな問題は、市の核心産業である金融界のニューヨーク離れの流れだ。最近、大手ファンドのブラックストーンやエリオット、資産運用会社アライアンス・バーンスタインなどは、税金や各種費用が安いフロリダやテネシー州などに移転する計画を明らかにした。特に、財務長官を4人も輩出した「ウォール街の看板」ゴールドマンサックスも、核心部署である資産運用事業部のフロリダ移転を検討している。ゴールドマンがニューヨークを離れれば、税収、雇用への打撃が避けられないが、金融ハブの地位を強化する対策を出せていない。

最近、地元放送局NY1が調査したデブラシオ氏の支持率は49%で、1回目の選挙(73%)と2回目の選挙(67%)の得票率より低い。下がった人気を反映するかのように、来年11月の市長選挙を1年後に控え、早くも30人余りの候補が出馬の意思を明らかにしたり、出馬を準備している。現職市長がプレミアムを享受するどころか弱体化している現実が、ライバルの相次ぐ出馬を煽っている。特に、今年の民主党の大統領選候補を選ぶ予備選挙で、基本所得を主張して大きな注目を浴びた台湾系実業家のアンドリュー・ヤン氏は、出馬宣言をしていないのに各種世論調査で1位を走っている。

 

登録有権者の約70%が民主党員であるニューヨークでは、実際の選挙ではなく来年6月の民主党候補の予備選挙が事実上の本戦とされる。すなわち、党内予備選挙を通過すれば、業務遂行能力が優れていなくても市長に選ばれる可能性があるということだ。黒人女性と結婚したデブラシオ氏も、結果的には全有権者の54%にのぼるラテン系と黒人有権者の票の集中で再選に成功したという評が少なくない。まだ、デブラシオ氏が3期目に挑戦するかどうか明らかにしていないが一つのことは明らかだ。政派理念と人種背景に起因した勝利は1、2度は可能かもしれないが、結局は有権者も、背中を温かくお腹をいっぱいにしてくれる候補を好むということだ。


河貞敏 dew@donga.com