お笑い芸人たちは自分たち同士で「組む」という言葉をよく使う。お笑い芸人たちは、ギャグの素材を実際の経験から手にすることが多いが、そんな経験だけでは限界があるので、時にはありもしない経験を、実際あったかのように作って、笑わせたりもする。金濟東(キム・ジェドン)が防衛兵として服務した時、将星たちが集まった行事で司会を務めた際、とある4星将軍の妻をおばさん呼ばわりして、13日間も営倉に入れられたというエピソードも、後でわかったことだが笑わせるために組んだ話だった。
◆ギャグが笑いを誘うのは、日常の中の非合理や非論理的な面を表すためだ。それには批判の要素がある。お笑い芸人たちが自分を笑いの種にするなら、虚偽であれ、事実であれ、あまり問題にはならない。周りの仲間たちを引き込むときは、事実でも問題になりかねない。親しいと思ってそれほどの無礼は許されるだろうと思っていたのに、その思いが崩れた時だ。好意的でない人たちを素材にするなら、話は違う。事実に基づいた時は風刺といって、表現の自由として保護されるが、虚偽に基づいた時は、名誉棄損になりかねない。英米法ではこれを名誉棄損性ユーモア(defamatory humor)という。
◆軍は上意下達の組織であり、一般社会の基準で見れば、笑わせる出来事が多い。ここで笑わせるという意味は、とんでもない非合理なことを言う。金濟東が本当に将軍の妻をおばさん呼ばわりして、営倉に行ったなら、それこそ本当に笑わせる出来事だ。軍隊に服務した経験のある男なら、誰もが軍隊で経験した笑わせるエピソードの一つや二つぐらいは持っているはずだ。そんなことだろうと笑ったのに、事実ではなかった。
◆金濟東は、国政監査証人喚問を巡る議論が起きると、「笑わせるためにしたことなのに、むきになってとびかかるならどうしようもない」と切り返した。「防衛兵が退社後に残って司会を務めたこと自体が軍法違反だ。国政監査場で口にしたら、頭が痛くなるだろう」と脅しでもかけるかのように話した。笑わせるために口にした嘘より、笑わせるために口にしたことが嘘だと判明された時に示す態度のほうが、より一層お笑い芸人らしくない。お笑い芸人は、わが社会の矛盾を柔らかいユーモアで鋭く表すために愛されるが、誰かを嘘で嘲笑うことになれば、関係者らを心を傷つけることもできる。
宋平仁(ソン・ピョンイン)論説委員 pisong@donga.com






