父親と兄のために2人は近づくことができなかった。朴正熙(パク・チョンヒ)元大統領は、大韓民国を貧困から救った立役者であり、全泰壹(チョン・テイル)氏はその産業化の陰で焼身自殺で抵抗した労働運動の先駆者だった。窮乏の時代に暮らしていくことと労働者も人間らしく生きることのうちどちらが切実か、という論議は今もある。朴大統領の娘の朴槿恵(パク・クンヘ)大統領と全泰壹氏の妹の全順玉(チョン・スンオク)議員(新政治民主連合)は、このような過去に束縛されずに会える関係ではない。
◆2012年8月28日、セヌリ党大統領選候補だった朴大統領は、ソウル昌信洞(チャンシンドン)の全泰壹財団を訪れようとしたが、双龍(サンヨン)自動車の労組員らが行く手を遮った。全議員も、「財団の訪問よりも現在の労働問題の解決が優先されなければならない」と反対声明を出した。朴大統領は、清渓川(チョンゲチョン)6街にある全泰壹銅像に献花しようとしたが、今度は労組員が花を道に捨てた。朴大統領は、縫製工場の裁断師だった全氏が1970年11月「労働者も人間だ」と叫んで焼身自殺した場所を訪れ、「産業化勢力と民主化勢力が和解・協力する国を作る」と言って引き返した。
◆16〜21日に予定された朴大統領の中央アジア3ヵ国歴訪に全議員が同行する。朴大統領は海外歴訪に野党議員の参加を何度も要請してきたが、野党が受け入れたのは初めてだ。新政治連合は、全議員が持つ民主化と労働人権の象徴性を考慮して全議員を推薦したという。多分に朴正熙と全泰壹を念頭に置いて、与党の意思疎通要請に「とげのあるバラ」で応じたわけだ。
◆旅先では見知らぬ人も友になる。成長期を王女として送った朴大統領と女工として送った全議員は背景が違う。しかし、話をすれば共感する部分もあるだろう。全議員は英国の大学で修士・博士学位を取得し、英語も流暢で会社経営の経験もある。2人がこの機会に私的な和解を越えて国益のために真摯な超党外交をすることを願う。大統領と与野党に国民が望むこともそのような姿だろう。
韓起興(ハン・ギフン)論説委員 eligius@donga.com






