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北朝鮮当局「『鄭道伝』を見れば厳罰」

Posted May. 28, 2014 03:41,   

北朝鮮当局が先月、韓国の歴史ドラマ「鄭道伝(チョン・ドジョン)」の不法流通を徹底して遮断するよう全国の体制保衛機関に指示したと、北朝鮮事情に詳しい情報筋が27日、明らかにした。北朝鮮の韓国ドラマの取締りはいつものことだが、今回のように特定のドラマのタイトルをあげて統制と処罰を強化する指示をしたことは異例だ。

同消息筋は、「北朝鮮当局が、保衛部や保衛司令部など体制保衛機関に『鄭道伝』の取締りを命じ、このドラマが歴史をひどく歪曲しているという理由を挙げたと聞いた」と伝えた。そして、「しかし、実際の取締りの理由は、鄭道伝が北朝鮮でダブー視されている易姓革命を扱っているためだろう」と付け加えた。

ドラマ「鄭道伝」は、李成桂(イ・ソンゲ)とともに王氏の高麗(コリョ)王朝を倒して新しい李氏王朝を建国した朝鮮時代の開国の功臣、鄭道伝の話を扱っている。実際の歴史をもとに臣下が王を追い出す過程を含んでいるため、「白頭(ペクトゥ)血統論」を掲げて3代世襲を正当化する金正恩(キム・ジョンウン)体制に非常な脅威とならざるを得ない。

ドラマの中の李成桂の描写が、北朝鮮が学校で教える歴史に反するということも統制の背景のようだ。北朝鮮は李成桂のことを権力に目がくらんで高句麗の領土を取り返せる絶好の機会を逸した万古の逆賊だと教えてきた。さらに北朝鮮の歴史教科書では、鄭道伝の名前は言及されない。その代わり、鄭夢周(チョン・モンジュ)を高麗の忠臣だと教えている。

北朝鮮事情に詳しい情報筋は、「今回のようにタイトルを取り上げて不法視聴者の厳罰指示が下されたことは、2000年代半ばにも1度あった。中国の全50話のドラマ『皇帝の娘』だった」と指摘した。このドラマには、奔放な皇帝と権力と愛を独占しようとして争う王后と妾、子どもたちの陰謀や裏切りなど、宮中の暗闘が詳細に描かれている。北朝鮮の住民たちは当時、このドラマを密かに見て「私たち(金正日家)もあんなことが起こっているのだろう」と話していたという。

北朝鮮は歴史物で王や王家を扱うことをダブー視する。住民が事実上の王朝体制である北朝鮮の現実と比較するためだ。過去には、「林巨正(イム・コクチョン)」や「ホン・ギルドン」のように支配階層の収奪や出身成分に抵抗する主人公を扱った映画を制作したが、1990年代以降、幹部の収奪に対する住民の不満が高まると、このような素材もダブー視された。

北朝鮮で歴史物として扱える素材は、2010年に制作されたドラマ「桂月香(ケ・ウォルヒャン)」のように外敵に対抗して戦う内容だけだ。しかしこのドラマも、外の世界のドラマをこっそり見て目が肥えた北朝鮮住民の関心を引くことができず、早期に終了した。

一方、最近は北朝鮮にスマートパッド、EVDプレーヤー、USBなど様々な映像再生機器や保存媒体が流通し、保衛部が取締りに困難を来たしているという。外部の映像物は密輸で北朝鮮に流入している。最近では、北朝鮮の商人が中国の取引相手にドラマを指定したり、北朝鮮人権団体が密かに散布するケースが増えているという。