3日、外換(ウェファン)銀行のディーリングルーム。為替市場の取引終了時間の3時が迫っていたが、静かだった。注文を叫ぶ声がたまに聞こえてきたが、市場が乱高下する時のような、差し迫った姿は、なかなか目にできなかった。外換銀行のカン・チャンフン資金市場本部長は、「現在、為替の取引高は、昨年のこの時期の50〜60%レベルだ」とし、「企業各社はドルを相当貯めておきながら、あまり売りに出していない」と話した。
外国為替市場では、ドルの取引が閑散としているが、銀行の外貨預金の窓口には、輸出企業各社が稼いだドルが、地道に貯められている。企業銀行の関係者は、「外貨預金は、上半期に下ろされたが、下半期から大幅に伸びた」とし、「短期間の決済のための待機資金が大幅に増えている」と話した。
●「不況型黒字」に企業の外貨預金が増加
4日、金融監督院によると、今年9月末基準の韓国国内銀行の外貨預金は、計774億1000万ドルと、昨年末(683億1000万ドル)より、91億ドル(13.3%)伸びた。これには、企業各社の外貨預金の増加が大きな影響を及ぼした。企業各社の9月末基準の外貨預金の金額は、計644億ドルと、12年(565億6000万ドル)に比べ13.9%伸びた。これは、貿易収支の黒字が続き、企業各社の「ドル事情」が好転したためと見られる。
しかしその中身をみれば、不況の影が立ち込めている。内需低迷による輸入減少が、貿易黒字の主な要因といわれているからだ。今年1月から10月までの輸出は、19%伸びたが、輸入は1.2%減少した。12月末に決済需要が集中し待機資金が増えていることも、ドルが溢れている原因だ。
企業銀行の関係者は、「短期資金を預ける外貨普通預金の残高は、11月末基準で、昨年末より43%伸びた」とし、「12月に決済需要が多く、外貨預金の残高も減るだろう」と語った。
●「低金利時にドルを工面しよう」
外貨預金の増加には、公企業の動きが決定的な役割を果たした。米国の量的緩和の縮小で、ドルが足りなくなることに備え、6月ごろ、政府がエネルギー関連公企業各社に、「外貨建て債券を発行し、ドルを確保するよう」奨励したのが大きかった。
金融界によると、外貨預金の増加企業のうち、上位10社は全て、韓国ガス公社などの公企業だ。ガス公社は、第3四半期(6〜9月)だけで12億9000万ドル分の外貨建て債券を発行したが、これは第2四半期発行額の15倍に上る金額だ。
ある公企業の関係者は、「先進諸国の景気が蘇り、米ドル高が進めば、資金誘致のために、金利も上がる」とし、「企業の立場では金利が低い時、予めドルを確保するのが有利だ」と語った。
●「一気にドルが殺到すれば、ドル安を懸念」
保有中の外貨の規模が大きくない一部の中小企業の中には、米国の量的緩和の縮小後に続くウォン安ドル高の効果を狙っているところもある。自動車部品を輸出しているA社は、「量的緩和の縮小効果で、ウォン安が進めば、ドルを売る計画だ」とし、「まだ、為替相場の方向性に見当がつかず、見守っている」と話した。
問題は、企業各社が保有した外貨がためられている現状であり、いつかは市場にドルが供給されるだろうということだ。三星(サムスン)物産のチョン・スンジ研究員は、「マジノ線の1ドル=1050ウォンが崩れれば、企業各社は我先にドルの売りに出かねず、これは急激なウォン高を招きかねない」と主張した。
企画財政部は、「ドル売りが、特定時点で殺到する偏り現象が再現されれば、輸出入メーカーの懇談会などを通じて、協力を要請することもありうるが、今はそれほど懸念する段階ではない」と述べた。