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「DNAの秘密」が揺さぶる検察権

Posted September. 26, 2013 03:11,   

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蔡東旭(チェ・ドンウク)検察総長が婚外子疑惑を受けて辞表を提出したことで起こっている一連の事態を解決するには、事実の究明が先だ。理念や政治的プリズムで見た場合、事実を見逃しやすい。蔡総長が今、自分の子どもであると疑われている蔡君や検察組織の安定のためにすべきことは、速やかにDNA検査を受けることだ。

蔡総長は朝鮮日報に訂正報道請求訴訟を起こし、「(朝鮮日報が指定した児童の側でも)速やかにDNA検査に応じることを願う」と述べた。しかし、迅速な真実究明を望むなら、訴訟を起こして文書でDNA検査に協力するよう要求することはない。法廷で真実を明らかにするには時間がかかるうえ、裁判所はDNA検査を強制することができない。蔡総長が、イム氏母子を説得して客観的な方法でDNA検査を受ければ、簡単に解決されることだ。

朝鮮日報が、蔡総長の婚外子を断定的に報道した際、イム氏は、朝鮮日報とハンギョレに手紙を送った。この手紙によると、イム氏が周囲や息子に「蔡東旭」が父親だと事実と異なる話をしたということだ。イム氏はこの手紙で、「子どもの父親は蔡氏ではあるが…(蔡東旭氏とは)何の関係もない」と説明した。子どもの父親が蔡東旭氏なら当然、養育費を求めただろうが、経済的援助も受けたことがないという。韓国の姓氏別人口数の順位で蔡氏は52位だ。子どもの父親も、蔡東旭氏と同じ蔡氏ということは確率の低い「奇縁」だ。男性は分からなくても女性は子どもの父親が誰かが分かる。子どもが蔡総長の息子ではないのに、イム氏が蔡総長の公職と家庭に暴風を吹かせる嘘を周囲にばらまいた理由について、手紙の内容だけでは納得できない。

蔡総長がすべきことは、子どもの父親かどうかを明らかにすることだ。子どもが誤解しているなら、母親が注入した「嘘の神話」を訂正しなければならない。残忍かも知れないが、いつかは知るべき真実なら、回避したからと解決されるわけではない。しかし、その反対に、蔡総長は知らなかったとしても、DNA検査の結果、実父と明らかになるなら、子どもが父親を父親と呼べるようにすることが道理だ。

検察総長が途中で辞表を出すほど爆発性を持ったスキャンダルが、なぜ大統領府の人事検証や国会人事聴聞会で明らかにならなかったのか疑問だ。恐らく大統領府がこのようなスキャンダルを知っていたなら、総長に任命しなかっただろう。大統領府は人事聴聞会で、野党が「調べれば調べるほど美談しか出てこない」と言うと、蔡総長を疑いの目で見始めた。蔡総長は、国家情報院の捜査で、法務部の意見を無視して朴槿恵(パク・クンヘ)大統領に重荷となった。権力を持つ側が蔡総長の弱点を知っていたなら、さぞかし暴きたかったことだろう。露呈の経緯はどうであれ、婚外子問題は検察総長として重大な失格事案だ。検察総長が無欠であってこそ、権力や野党から検察の独立を守ることができる。

「法と原則に則って正しく検察を率い、すべての事件を公正かつ不偏不党の立場で事実を明らかにし、ありのまま法律を適用した。」法務部はこのような蔡総長の辞任声明の後、検事の集団意思表示まで続くと、辞表を受理せず、監察を継続すると発表した。剛直な検察総長を大統領府と法務部が圧迫手段を使って辞任に追い込んだという非難を受けたくないのだろう。

蔡君が総長の息子だとしても、それは犯罪ではなく、公職者の倫理に関する事案だ。蔡総長とイム氏の協力がなければ、監察で調べたところで情況証拠にすぎない。婚外子の真実は今後の蔡総長の対応を見て国民が判断すればいい。イム氏が蔡総長の「無念」を晴らすために自発的にDNA検査を受けるなら、真実は簡単に究明される。しかし、イム氏母子がDNA検査を拒否するなら、その権利も尊重されなければならない。イム氏母子は公人ではない。メディア報道の真偽を明らかにしたり、大衆の好奇心を満足させるために、母親と子どもの意思に反してプライバシーを侵害してはならない。

大統領府は新総長を速やかに任命し、動揺する検察組織を安定させなければならない。大統領府と法務部は蔡氏を私人として、積極的にDNA検査に応じるかどうかを見守ることだ。