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fromジョブズtoオバマ

Posted August. 10, 2013 03:02,   

尊敬するオバマ大統領殿。私が地上世界を離れ、ここ、天上に来てからもはや2年近く経とうとしています。私は10年秋、サンフランシスコであなたに会ったとき、「あなたは1期目の大統領で終わる可能性が高い」と申し上げたことがあります。大変ご無礼で、結果的に外れた私の予測について、お詫び申し上げます。そして、遅ればせながら再選をお祝い申し上げます。

私は生前、「偉大な製品」を作ることに全ての情熱をつぎ込んできました。もちろん、企業には利益も重要だが、偉大な製品を作ることに貢献することにのみ、意味があるというのが私の考えです。私は、政府にロビーをしたり、保護を受けたりして、利益を上げるべきだと思ったことは一度もありません。そのため、私が政治に関心を持つべきことは無かったでしょう。半分の確率であるあなたの再選如何についても、当てることができなかったのは、ある意味では当然の結果です。

私は最近、米国際貿易委員会(ITC)が、アップルのスマートフォンやタブレットPCについて、「三星(サムスン)の特許を侵害した」という理由で、輸入を禁止したという言葉を耳にし、戸惑いを隠せませんでした。ところが、まもなく、あなたが拒否権を行使したというニュースが届きました。アップルを配慮するあなたの暖かい気持ちについては、「ひとまず」深く感謝せざるを得ません。

三星との特許戦争は、私がアップルに在職中に始まったことです。三星のギャラクシーSやギャラクシータブが、アイフォンやアイパッドのデザインを真似したことは事実でしょう。私がどれほどまねすることを嫌うかは、よくご存知ですね。マッキントッシュ(マック)のグラフィックユーザーインターフェイス(GUI)をそのまま真似して、ウィンドを作ったマイクロソフト(MS)のビル・ゲイツに、私が何度も怒ったことも、よくご存知だと信じています。

人々は私を、「革新のアイコン」どよんでいます。パソコン市場を創造し、初めてGUIを実用化させ、マックーアイポットーアイフォンーアイパッドなどの革新的製品を次々と出してきたので、そのような異名がつくこともうなずけるでしょう。ところが正直に告白すると、そんな私でも、人のアイデアを全く盗んでいないことではありません。

「ウィンドは、マックのGUIをまねしたものだ」と、私がゲイツをひんしゅくしたところ、彼はこう切り返しました。「我々2人には、ゼロックスという富裕な隣人がたったが、私がテレビを盗もうとして駆け込んだところ、あなたが先に盗んでいた事実を見つけただけだ」。ゲイツの指摘どおり、マックのGUIは、ゼロックスの製品からアイデアを持ってきたのは事実です。

パブロ・ピカソは、「よい芸術家は模倣し、偉大な芸術家は盗む」といいました。私もすばらしいアイデアを盗んだことを恥ずかしく思ったことは一度もありません。問題は、偉大な製品を作ったかということです。実は私は、MSがマックの真似をしたため怒ったのではなく、きちんと盗むことができなかったため、すなわち、みすぼらしい三流製品を作ったから怒っただけです。

大統領にも、事案の核心は特許ではなく、「偉大な製品」であることを知ってほしいと思います。アップルと三星との長引く特許をめぐる攻防が続く間、革新を姿を消しました。二社共に、次々と後続モデルを発売しているが、革新や偉大さとは程遠い、凡作に過ぎません。私がスタートを切りましたが、私の死後に繰り広げられている特許戦争は、正しい方向感覚を失ったことだけは確かです。

9日にITCが、三星がアップルの特許を侵害したかを突き詰め、輸入禁止するかどうかを決めるそうですね。今度も拒否権を行使するかどうかは、全て大統領のあなたの権限です。ただ、いかなる決定を下しても、アップルが政府の保護やロビーという気楽な手段に安住し、情熱やチャレンジ精神を失うことだけは生じないようにして下さい。

「常に渇望し、馬鹿のようにチャレンジする(Stay hungry,stay foolish)」精神を失ったアップルは、もはやアップルではありません。