筆者が映画館で映画007シリーズを初めて見たのは、1977年作の「私を愛したスパイ」だった。ロシアの核潜水艦が消えた事件を契機に繰り広げられる息の詰まるようなスパイ戦を描いたこの映画は、初場面の雪原で展開される追いかけるシーンから手に汗を握らせる。テレックス時計、組立て式ジェットスキーなど、当時としてはびっくりする新兵器が多く登場した。最もすごいのは言うまでもなくボンドカー「ロータス・エスプリ」。流線型の最高級スポーツカーが水の中に入ると、小型潜水艦に変形するのは驚嘆そのものだった。
◆1962年「殺人番号」を皮切りに、50年間6人のジェームズ・ボンドが登場したが、映画ファンはためらわずにショーン・コネリー(1962〜1971)とロジャー・ムーア(1973〜1985)を最高の007に挙げる。古色蒼然な城から歩いて出たようなエメラルド色の瞳を持つ超一流紳士のコネリーが英国のアクセントで、「ステアではなく、シェイクで(shaken, not stirred)」とマティーニを注文する姿に惚れた女性が数え切れない。12年間7本の映画でボンドに扮したロジャー・ムーアは、007の商業的成功の最大功臣だ。奇想天外な想像力の世界で、ムーアは天下無敵のスーパーヒーローだった。
◆男性観客は人間の力でどうしようもなかった任務を果たしたボンドが最高の美女と愛をするエンディングシーンに魅了させられた。水に濡れた髪の毛をかきあげながら海辺に登場した1代ボンドガールのウルスラ・アンドレスは一気にホワイト・ビキニの女神になった。ボンドを殺しようとしたが、かえって愛に落ちる役割をしたビートルズメンバーのリンゴ・スターの妻バーバラ・バックの致命的な魅力に世界中が魅了された。ボンドガールは白人でなければならないかという批判のためか、1990年代からは黒人スターのハル・ベリー、中国スターのミシェル・ヨーなども登場した。
◆007の人気が前と違って下火になっている。過度な善悪構造をベースにしたシナリオに飽きた観客が多くなり、「ミッション・インポッシブル」や「ボーン」シリーズ流の一層迫力あふれるスパイアクション映画が増えて、007が居場所を失っている。最近封切られた50周年記念作の「スカイフォール」は過去への回帰を選んだ。第1作で登場した旧式拳銃の「PPk/s」が再登場し、1965年に出た伝説のボンドカー「アストンマーチン」が復活した。しかし、どうしよう。読者の想像力は既に「マイノリティ・リポート」を越えて「アバタ」へ行っていることを。
ハ・テウォン論説委員 triplets@donga.com






