Go to contents

[オピニオン]夜間集会への誘惑

Posted March. 14, 2009 09:43,   

日本の国民作家、司馬遼太郎が書いた小説「燃えよ剣」には、19世紀、日本の村の古くからの風習が紹介されている。一年のうち決まった日になると、若い男女が月明りも消えた漆黒の夜になると寺院に集まる。辺りが見えないため、横を歩いている人が誰かもわからない。約束の合図で男女は近くにいる人と性関係を持つ。これと似ているのが、欧州で発達した仮面祭りだ。現代になって観光商品になったが、元々は、仮面をつけて身分を隠し、普段抑えつけられていた欲望を吐き出す逸脱の機会に利用された。

◆夜という時間は、人間の道徳観念を緩め、群衆心理に駆られやすくする。闇が大きな仮面になって、匿名の陰を提供するからだ。昨年の狂牛病(BSE=牛海綿状脳症)ろうそく集会の時、デモの場所とその周辺が無法地帯になったのも、これと無関係ではない。明るい昼間だったなら、デモ隊が警察官に集団で暴行を加え、パトカーを壊しただろうか。「集会およびデモに関する法律(集示法)」が、夜間の屋外集会を禁止しているのもこのためだ。夜間のデモは過激化しやすく、この過程で不法と暴力が起こりやすいからだ。このような内容を存置した現行の集示法は、1989年の民主化政治勢力の主導で作られた。

◆いわゆる進歩や左派団体の集会は、夜間に集中している。午後遅く始めて、暗くなればろうそくを灯すという手法だ。「文化イベント」と言い張るが、そのような目的でないことは集会参加者がよく知っている。変則的な手法で使ってまでして夜間集会にこだわるのは、夜の匿名性と煽動效果を念頭に置ているからに違いない。ろうそく集会で、数回にわたって「興行」に成功した記憶が、夜間集会への誘惑を駆り立てたと言えるだろう。

◆彼らは、さらには夜間集会の禁止が違憲だとまで主張する。彼らによる違憲審判提案申請によって、12日に憲法裁判所の公開弁論まで開かれた。夜間集会を合法化しようという態勢だ。そこまでして何を成し遂げようとしているのかが知りたい。「進歩」と言えば、概ね明るく良心的なイメージを思い浮かべる。にもかかわらず、明るい日中を差し置いて、暗い夜に隠れる「進歩」なら、卑怯と言わざるを得ない。闇を取り払って素顔が世間に現われるのを恐れるのか。このような進歩は、不法と暴力に寄りかかるニセ進歩である。

洪賛植(ホン・チャンシク)論説委員 chansik@donga.com