Go to contents

彼らが征服したものは山か?自分自身か?

彼らが征服したものは山か?自分自身か?

Posted September. 29, 2007 03:43,   

한국어

詩人のウィリアム・ブレイクは語った。「人が山へ行けば偉大なる歴史が作られる」と。それはひょっとして、ハンニバルがアルプスを登ったことを言ったのだろうか。そうではない。この歴史は違う。

「都市の人ごみではできない」経験。聖域をのぞき見るチャンス。山は小さな人間が太古の自然をうかがう、尊い歴史をつくりだす。

「世界の名山…」はその偉大なる歴史の記録だ。世界34ヵ所の名山で行われた35回の挑戦を取り上げている。1953年に世界で初めてエベレストを登ったテンジン・ノルゲイとエドモンド・ヒラリーなど伝説的な登山家たちの道程をたどる。

その道程は壮大だ。著者はK2やモンブランばかりを紹介したりしない。

「ぐらぐらと沸く氷」南極の活火山エレバス山、「海にそびえる山」ボールズ・ピラミッド(オーストラリア)、赤道の氷山ケニア山…。世界各地の隠れた宝石を紹介する。

大判のページにうつし出された写真は、文字通り絵画だ。見るだけで胸がすっとする。35本のストーリーも1本の映画だ。アルプスのアイガーの話では、父親が開拓し登る過程で墜落死した北壁直登ルートに挑戦するジョン・ハーリン3世を取り上げる。

女だてらに難攻不落といわれたフィンスタールホルン山の北壁に挑戦したゲートルード・ベル、ベネズエラのアウタナ、垂直の南西壁に挑戦したジョン・エラン夫妻のエピソードも興味津津だ。大きな魅力は、この偉大な山登りが必ずしも成功を意味しないということにある。

1951年にモンブランの「垂直尖塔」グラン・カピュサン東壁を最初に登ったヴァルテル・ボナッティ。しかし、著者はむしろ試練に注目する。本書は、1961年にボナッティを含む7人がモンブラン中央のピーラルートを開拓した際に4人が死亡したエピソードを取り上げる。失敗したものの、「超人的な推進力と勇気」で2人を求出したボナッティ。そこに偉大さを見出す。

著者は語る。「逆境を乗り越えた人間の勝利は魂を刺激する」。ニュージーランドのマウントクックでの遭難で両足を失ったマーク・イングリス。

2006年にイングリスは両足無しでエベレストに登った最初の人物になる。カナダのローガン山で十指をすべて切断したエリック・ビヤルナソンは、娘を抱いてこう語った。「私の子供を抱くのに必要なのは指ではなく、抱こうとする心だ」。

やや高価ではあるがそれだけの価値はある。著者は1988年に無酸素でエベレストに登った最初の英国山岳人。訳者は東国(トングク)大学山岳部OBで、韓国山岳会の元編集理事だ。

「私たちが征服したものは山でなく、私たち自身だ」(ヒラリー)。山ではなく、山を愛した人の高貴な香りに満ちている。



ray@donga.com