警察署の留置場をのぞいてみたことがあるだろうか。信じがたい話かもしれないが、そこに入れられた者の容疑のうち、最も多いのが姦通罪である。毎朝の「署回り」でそのことを知り、衝撃を受けたある新米記者は、それを詳細に取材して記事にした。しかし、記事を紙面に載せられなかったので、今度は事件を類型化して「韓国社会の姦通罪」という企画記事まで書き上げた。「全国紙をタブロイド紙にしたいのか」という先輩記者の一喝で姦通問題に対する新米記者のこだわりは一段落した。
◆大半の人間社会では、父と母が協力して子どもを育てる。離婚した夫婦でも子どもを扶養する責任を分かち合う。ところが、オランウーターンやキリンなど他の哺乳類や昆虫などが人間の言葉が話せたら、「父にも子育ての義務を負わせるなんて、人間の制度はおかしいものだ」と言うかもしれない。これらの動物の世界では、ほとんどの雄は交尾が終わった瞬間、相手となった雌との関係を打ち切り、いそいそと違う相手を探しに行く。
◆このような乱婚が当たり前の世界では、姦通罪は成り立たない。特定の配偶者がいてはじめて「裏切り」が問題になる。したがって、「姦通が問題になる動物は、性的に最も貞淑な種」という逆発想も可能だろう。実際、ヒトだけでなく、テナガザル、ジョウビタキなど、一夫一妻の動物は機会さえあれば姦通を試みる。生物学者の解釈は次のようだ。「配偶者がある雄と雌の間でも、互いに自分の遺伝子をより多く残すための競争や企みがある。このような戦略が進化した結果が姦通とそれに対する防衛策といえる嫉妬、そして監視だ」。こうなれば、姦通することは動物の遺伝的本能と言ってもよさそうだ。
◆ある裁判官が憲法裁判所に姦通罪に対する違憲審査を請求したことで、姦通罪の存廃が論議を呼んでいる。「姦通罪の条項は、性への自己決定権を侵害するもので、寝床まで国の刑罰権の対象にしてはならない」というのが請求の理由だ。姦通罪で告訴される妻が増えるにつれ、女性界でも姦通罪の存続を求める主張が力を失っている。もちろん、姦通罪が廃止され、刑事処罰がなくなったとしても道徳的・民事的責任まで免れるわけではない。
虚承虎(ホ・スンホ)論説委員 tigera@donga.com






