米国の女性たちの胸元を際立たせてくれる国はどこだろうか。2ヵ月前、米国と中国の間に引き起こされた貿易紛争の内容をみると、正解は中国と言った方がよさそうだ。昨年11月、米国が中国産ブラジャーおよびニットのナイトウェアーに対しクォーター制を適用する方針を明らかにしたことに中国が反発、世界貿易機関(WTO)に提訴するとしたもの。名づけて「ブラ戦争」という。
◆繊維製品は、頭や技術より人の手に頼る、労働集約的産業である。世界の製造工場といわれる中国では、1500万人が直接的に、1億人の人口が間接的な形で繊維産業に関わっている。メードイン・チャイナのブラジャーのほとんどは、米国に輸出されている。ブラジャーは、殊に不況期によく売れるという、変わった特性を持っている。女性たちは、高価な洋服を買うのは我慢できても、新しい下着のひとつくらいは、簡単に買ってしまうからだ。自らを慰めるためだとか。米国も「雇用なき成長」のため、体で感じる景気が思わしくないうえ、安価なブラジャーまで買えないとあっては、中国はもとより米国の女性たちも気が気でないはず。
◆「ブラ戦争」の裏には、米国のアパレルメーカーの存在がある。中国の安価な繊維製品が、米国内のおよそ31万6000もの事業場を奪った主犯だとして、大統領選挙を控えた政界に対し保護貿易を働き掛けたのだ。当初、報復を唱えていた中国が、今週から米国との交渉を始めたが、今度は欧州の繊維会社が反発した。欧州繊維協会のユーラテックスが「このまま輸入が増えれば、工場が倒産し、失業が増える」として、欧州連合(EU)執行委員会に対し、化学繊維のセーフガードの発効を促した。欧州と中国の間で、第2の「ブラ戦争」が予告されたわけだ。
◆中国産のブラジャーが品薄になると、また別の国の安物のブラジャーが登場することになるだろうが、その内訳は、ブラジャーの紐よりも複雑だ。米国は、昨年4468億ドルもの貿易赤字について「他人のせい」にする対象が必要だった。そのうち、4分の1を占める中国は、格好の生け贄として映ったのだった。EUもまた、中国が通貨価値を固定してしまったため、ドル安の反面、ユーロが暴騰しているとの理由で「中国叩き」に加勢している。弱い相手には自由貿易を要求しながら、自らは保護貿易に回帰する一方、失政による経済問題は他人のせいにするのが、強者の倫理のようだ。
金順鄹(キム・スンドク)論説委員 yuri@donga.com






