
「魂のある企業」
デビット・ベストン著/シン・チョルホ訳/352ページ/1万5000ウォン
1982年、鎮痛剤のタイレノルを服用して8人が死亡する事態が起こった。タイレノルの製造メーカーであるジョンソン&ジョンソンの経営陣は、正確な死亡原因が判明する前に、米全域の薬局に並んでいるタイレノル3100万箱を全量回収する措置を速やかにとった。
精密調査の結果、ジョンソン&ジョンソンの責任ではないことが明らかになったが、会社はこの事件で2億4000万ドルの損失をこうむり、売上高も前年度の半分水準である50億ドルも落ち込んだ。しかし、経営陣の迅速な決定は、タイレノル・ブランドを蘇らせ、顧客の信用を取り戻す結果をもたらした。
経営コンサルティング会社のタワースペリンは「倫理経営」で名声を博して、毎年最も働きたい職場として挙げられる25社の15年間の業績を分析した。ジョンソン&ジョンソン、サウスウエスト航空、プロックター&ギャンブルなど、倫理経営を行う企業の株主に回った平均収益率は43%だった。これに対し、信用格付け会社のスタンダードアンドプアーズ(S&P)に登録されている500の株式会社の平均収益率は19%に過ぎなかった。
「ビジネス2.0」の創立者であり、企業倫理に関して主に執筆してきた著者は「今では技術革新だけでは、真の成功企業になれない」と言い切った。社員と消費者いずれにも共感してもらえるような倫理経営を行う企業として映るかどうかが、成功する企業を判断する物差しになるという。
著者が主張する「倫理経営」とは、腐敗していなかったり、社会的な責任を果すなどの消極的な意味ではない。それは、透明経営と信頼経営が企業の長期的な収益を保障するコア・コンピタンスだという事実を明確に認識することからスタートする。
著者は「ファウストがメフィストとの取引を通じて魂を売ったように、企業が魂を売ってしまえばどのようになるだろう」と質問する。そして「会社の資源を社員と顧客に対するサービスに投入し、はじめて魂のある企業として生まれ変わることができる」と力説する。
これを実践するための倫理経営の8つの原則を著者は次のように提示する。
−企業の取締役陣と経営陣は個人的な利害関係を会社の利害関係者の運命と一致させるべきであり、会社の生存と活力を保障する責任ある方式で経営活動を行うべきだ。
−企業経営は株主と役員、そして国民に透明に公開されるべきであり、経営陣は責任ある経営を通じて、意思決定に対する責任を負うべきだ。
−企業は自らを市場の一部ではなく、地域社会の一部としてとらえるべきだ。
−企業は自社製品を正直に広報すべきであり、取引上の利害関係を超えて消費者を尊重すべきだ。
−企業は社員を単なる雇用人ではなく、組織を構成する貴重な人材として待遇すべきだ。
−企業は環境を企業の大事な利害関係者として位置づけ、環境保護に対する責任を果すべきだ。
−企業は社員、顧客、取引先との関係で均衡、多様性、平等などを実現に向けて取り組むべきだ。
−企業は、国際的な貿易および生産活動を行う上で、貿易相手国の労働者と国民の権利を尊重すべきだ。
金炯瓚 khc@donga.com





