91年の湾岸戦争を勝利に導いた、米国史上初の黒人統合参謀本部議長コリン・パウエル。退任後、大衆的人気を一身に集めた彼は、95年に自叙伝「マイ・アメリカン・ジャーニー」を出版し、翌年、大統領選挙出馬の機会を狙っていた。この時、パウエルの気持ちを変えた人物は他でもない、彼の妻エルマーだった。パウエルは結局95年11月、「家庭を守ることがもっと大切だ」という言葉を残して、大統領選挙への不出馬を宣言した。「愛妻家パウエル」は、今度はブッシュ大統領が再任を成功しても「妻と一緒にいる時間を持つため」国務長官を辞任する、とマスコミに話したという。国務省はこの報道を否認したが、こうしてパウエルの愛妻ぶりは改めて世界的に公認されたわけだ。
◆米国の高官が妻と家庭のために「帰去来辞」を断行した例は、パウエルのほかにも多い。近い例が、イラク戦争を短期間で勝利に導いて英雄になったフランクス米中央軍司令官。彼も結婚式の日、「いつか軍を離れる」という妻キャッシーとの約束を守るために、今年36年間の軍生活にピリオドを打った。そのために彼は、陸軍参謀総長の職まで断った。一生を公職に捧げ、残りの人生を妻と家庭に捧げるという人々の後ろ姿はいつ見ても美しい。
◆妻と家族愛の例は、私たちの周りにもある。最近「愛する時に去れ」という本を出したチェ・オギュ氏は、妻が不治の病で倒れ、98年に何の未練もなく銀行支店長の職を捨てた。彼は「思いきり走ってみたい」という妻の願いを叶えるために、病んだ妻を連れて5年間世界を旅行し、妻の病気は嘘のようによくなった。韓国のベンチャー業界の神話と呼ばれたヨム・ジンソプ前ヤフー・コリア社長は、病気の2人の子どもと妻を愛する切ない思いを、「私は少し長い夢をみた」という詩集に込めて最近出版した。
◆英国のことわざで「妻のいない男は屋根ない家」と言い、イタリアにも「妻のいない者は、葉と枝のない木」という言葉がある。今年で81歳になる詩人金チュンス翁は、妻の死を実感できず、こんな詩を書いた。「どこで横になっているのか/わきの腫れ物が痛むのか、いやいや/今度はちがうようだ/夜の帳を濡らし、雨が降る/もしやと思って外をのぞく/私はがっかりする」(「降雨」から)。世の中の富貴功名をすべて享受しても、老いて背を掻いてくれる妻よりも劣るというのは古今東西の変わらぬ真理のようだ。あまりにも忙しい男性たちは「手遅れになる前に」パウエル長官やフランクス司令官の決断を学ぶことだ。
宋文弘(ソン・ムンホン)論説委員songmh@donga.com






