新型肺炎SARS(重症急性呼吸器症候群)の影響で、中国人の生活が大きく変わっている。国家信用度の失墜や経済的なダメージなど、マイナスの影響も少なくないが、健やかな社会を目指す良いきっかけとしても捉えられている。
半官営通信社の中国新聞社が発行する新聞周刊は8日、北京、上海、広州に住む314人を対象に、生活の変化に関するアンケート調査を行った結果「SARSは、同時多発テロが米国社会に与えた影響より、さらに根本的かつ長期的な変化を中国にもたらしている」と伝えた。
▲職場離れと対人忌避〓中国政府が先月20日、北京のSARS実態を電撃公開して以来、北京市民の54%だけが職場に平常どおり出勤している。
2%は辞表を出し、7%はSARSのない外国や安全地帯に逃れており、残りは無断で欠勤している。また32%は、上司の出張命令を拒否した。SARS感染への恐怖が、職場の正常的な機能を麻痺させている。
対人忌避も深刻だ。相手と話をする際には1メートル以上の距離を置くかと思えば、銀行や商店などの職員は、顧客との対話を避けたり問い合せに応じないため、不親切との印象を与えている。
70%が親戚や友人との往来を絶ち、47%が愛人と抱き合ったりキスをしないことが分かった。さらに、50%が握手をせずにあいさつを交わし、家庭で食事をする際も各自別の取り皿を使ったり、夫婦の間でも同じベッドで寝ないといった現象すら現れている。
▲健全な社会に向かうきっかけ〓飲み屋、カラオケ、インターネットカフェ、ホテル、飲食店などが一斉に閉店したため、夕方から夜にかけて家族一緒に過ごす時間が増え、早寝早起きの習慣がついた。
北京の西城区裁判所によると、家族関係が円満になり、1週間平均70件あった離婚訴訟が、先月下旬からは40件以下と、およそ半減した。
道端に唾を吐くことがほとんどなくなり、家や街を消毒する生活が日常化するなど、公衆衛生へのマインドも改善した。
さらに、改革開放から20年間「金もうけが一番」という、金銭万能主義と個人主義の傾向に変化の兆しが見えている。
中国経済が、世界貿易機関(WTO)への加盟を機に、グローバル経済の仲間入りを果たしたように、世界保健機構(WHO)の環境基準に合わせることで、共同体の安全を守るべきだとの認識が広がっている。
在米社会学者の袁岳(ウィアン・ウェ)博士は「中国人のこうした認識がどれだけ続くかは疑問だが、中国が現代化に移行する過程で、今回のSARS波紋が重要な転機となることだけは確実」だと語った。
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