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[オピニオン]マドンナ

Posted April. 01, 2003 22:44,   

「F**k it!」口汚くののしりながら、かわいい女子兵隊がブッシュ米大統領に手榴弾を投げる。ブッシュ大統領はひざに落ちた手榴弾に火をつけてタバコをくわえ込む。画面はイラクの血を流す子供たちでいっぱいになる。世界的なポップススター・マドンナが発表したミュージック・ビデオ「アメリカン・ライフ」のワン・シーンだ。米国のオンラインニュースであるドラジー・レポートは、「ショービジネス産業が見せた最も衝撃的な反戦、反ブッシュ声明だ」と伝えた。20年間セックスシンボルとして君臨してきたマドンナが、今回は反戦歌手に変身したのだ。

◆1984年、ボディーにフィットするレースの上着に白いベール、パールの首飾りと十字架のアクセサリーで着飾り、「ライク・ア・バージン」を挑発的に歌った時から、黒のネグリジェ姿で火に燃える十字架の前で踊った「ライク・ア・プレイヤー」、そして露骨な写真集「セックス」に至るまで。見かけからすればマドンナは不埒なセックスシンボルでしかない。だが、「ライク・ア・バージン」には聖女でなければ娼婦という二分法的な通念の中で生きてきた女性たちに「ボディーを自慢するのも頭脳を自慢するのもやましくないことだ」というメッセージを盛り込んだと、マドンナの伝記「マドンナ・セクシュアル・ライフ」は説明している。続いて、宇宙の母のイメージを見せた「フローズン」。家族に対する愛を込めた「インターベンション」。宗教的な瞑想を取り込んだ「何事にも失敗しない」までを見ると、いったいこの女性の奥深さはどれほどなのか知りたくなる。

◆20歳の時、ダンサーの夢を抱えてミシガン州の田舎からわずか35ドルを手にニューヨークに来たマドンナだった。デビューの時、「これから何をしたいか」という司会者の質問に「この世を支配したい」と応えたほど恐いもの知らずだった。社会の流れと人々の心を一歩先駆けて知り尽くし、既存の音楽、美術、歴史などともからめて、「商品化」しては自分のイメージを絶え間なく変身してきた能力を持ち備えている。西欧の時代思潮を鋭く掴み取る本能的な感覚と自分に関する全てを完璧に管理するプロ精神はまさに天才的だ。だが、今回見せた反戦メッセージだけはビジネスでないと信じたい。

◆二人の子供を育てるマドンナがCNNのトーク番組「ラリー・キング・ライブ」に出演して語ったことがある。「私の人生で最高優先順位は家族だ」と。母親を6歳の時に亡くし、父親の愛を求めながら大きくなった彼女に「愛情欠乏」は永遠な苦痛であり、成功の原動力だった。だからだろうか。彼女は人々に最も記憶してほしい姿もディバやアーチストではなく、「よい母親だ」と言う。戦争の悲惨さに胸を痛める人々の心もマドンナのような母親の気持ちではないかと思う。

金順徳(キム・スンドク)論説委員 yuri@donga.com