バグダッドに向かって破竹の勢いで進撃しようとした米国地上軍が、イラクの執ような抗戦にあい苦戦している。イラク内部と毎日連絡を取っているヨルダン・アンマンの情報筋は、「状況が湾岸戦争の時とは違う。米軍の地上戦は、今後さらに困難になるだろう」と語った。長期戦への予告でもある。
▲空っぽの難民キャンプ〓開戦からこれまで、イラクからヨルダン入ったイラク人は見当たらない。スーダンやチャド共和国などの外国人だけだ。ヨルダン国境付近にある2つの難民キャンプのうちの、イラク人のための区域には、1人のイラク人もいない。荒涼とした土地にたてられた空っぽのキャンプには、冷たい風だけが吹いている。湾岸戦争の時なら、数万人でごった返していた。
国連難民高等弁務官室の関係者は、「まだバグダッドに食糧の供給が切れていないという証拠だ」と述べた。「今バグダッドを抜け出せば、裏切り者と映るため」という解釈もある。すでにフセイン政権が、「戦争前に、出ていく者はすべて出ていけ」との政策を取ったためでもある。
残っている人々は、バグダッド死守の命令を受けたバース党員や軍警公務員、そして政治に無関心な飢民たちだと見ていい。彼らが残留を決めた理由の一つは、経験則から米軍が選別的に爆撃するということを知っているためだ。結果的にフセイン政権は、バグダッドの長期抗戦で起こるかもしれない飢民たちの反乱の可能性を、最小化した形だ。
▲増えるバグダッド入り志願者〓アンマンには、バグダッド入りを試みる人々が増えている。避難民がいないのとは正反対だ。湾岸戦争の時にはなかった現象だ。
イラク人の建設労働者のダイェブ・カゼム氏は、「火の海になっているバグダッドを放送で毎日見る。生まれ育ったところで戦って死ぬ」と述べ、毎日のようにバスの便を調べている。「聖戦」志願者だ。このような人々が1人や2人ではない。南部バスラ出身の食肉業者のサタール・ムハマッド氏は、「毎日バスラに電話する。米軍が完全に掌握したという言葉は嘘だと言った。早く行かなければならない」と述べた。
しかし、彼らは国境を超えることができない。「命をかけた運行」をする運転手がいないうえ、運賃が3000ドルにまで暴騰したからだ。
「イラク入りを試みる人々」が現れる理由の一つは、「独裁政権からの解放」という米国の開戦論理が深く伝わらない中東の現実のためだ。ある専門家は、「中東には、民主主義という概念が元来ない。ヨルダン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、バーレーン、カタール、オーマンはすべて王政だ」と強調する。
フセイン大統領が「虐殺者」ということには共感するが、121の種族が住むイラクを統治するには、「強権政権」が必要だというイラク人のあきらめもある。
▲バグダッド囲んだ「石油の塹壕」〓特派員が1月にバグダッド南方250kmのディワニヤと、110km離れたバビルを訪れた時、道路左右の原野の灌がい用水路のそばに新しく掘られた水路を数多く目にした。みな道路と直角方向だった。水はなかったが、ガイドは「水路」だと説明した。その「水路」を掘っている人々の一部は軍服姿だった。
最近アンマンに抜け出したあるバグダッド市民は、「それは軍用の塹壕だ。水路とまったく同じように作るので衛星にも映らない」と語った。塹壕の中を埋めた「石油のカス」を燃やして米軍の北進を最大限に阻止する戦術という。
湾岸戦争の時とは違って、イラクは今回の地上戦に備えて数多くの腹案をもっているという。中部民間地帯では、「米軍が眠ることができないように、民家のあちこちで一晩中発砲する」という話もある。
イラクが、レバノン・シリア密輸ルートを通じて、ロケット砲や暗視装置、軍用ソフトウェアの入ったコンピューターを、最近数年の間に密かに大量に持ちこんでいたという話も流れている。
權基太 kkt@donga.com






