盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領と若い検事代表らの討論が予定された時から、フランスのミッテラン元大統領が頭に浮かんだ。92年にミッテラン大統領のテレビ公開討論をパリで見た経験が、鮮やかによみがえった。今は故人であるが、ミッテラン元大統領は雄弁で有名だった。政治路線が違うフランス人さえも、彼の言葉を書き取れば、無駄のない名文になると言って賞賛を惜しまなかった。盧大統領も達弁であるといえる。「大統領は『討論の達人』だから、制圧しようとせずに検事の言葉を聞いてほしい」という要求に不快感を表わしたものの、考えを秩序立てて明快にうまく表現することは、政治家に必須の才能でもある。果してミッテラン元大統領や盧大統領が、とつ弁でも公開討論に臨んだだろうか。
◆ミッテラン元大統領は、欧州統合条約であるマーストリヒト条約の批准を問う国民投票の前に公開討論を行った。討論は、由緒あるソルボンヌ大学の講堂で、3ラウンドに分かれて行われた。まず、討論参加を申し込んだ国民のうち無作為に選ばれた14人が、ミッテランと舌戦を繰り広げた。続いて、著名な言論人3人と討論した。最後に、条約批准反対運動の先鋒に立ったフィリップ・セゲン下院議員とミッテランが1対1で対決した。当時75歳のミッテランが、約3時間の間に18人を相手に繰り広げた舌戦は、今思い出しても手に汗を握る名勝負だった。
◆フランスのような熱い対決を期待して、今回の討論を見守った。韓国民主主義の底力を見せつける機会になることを願う期待も大きかった。しかし、心は終始不安でいっぱいだった。与党と野党で相反する評価が出てくるのをみると、国民の心情も同じなのだろう。フランスと比較すると、討論そのものへの客観的評価を困難にする「付随的要因」があまりにも多かった。マーストリヒト条約に対する賛否の意見は明らかにすることができるが、検察改革と人事問題は、2時間の討論で結論を下すには手に余るテーマだった。フランスと違って、大統領と検事を分離した席の配置も、討論を難しくする要因だった。
◆フランスの公開討論は、ミッテランの勝利に終わった。討論当時、賛否の世論が伯仲の状態だったが、2週間後に実施した国民投票で、マーストリヒト条約が通過し、欧州統合を先頭に立ってリードしたミッテランの肩の荷を軽くした。盧大統領の討論結果はどうか。大統領がせっかく困難な試みをしたのだから、いい結果が出てほしい。盧大統領は昨日「想像できない発言もあったが、問題視しない」と言った。大統領を追い込むことで、若い検事たちが不利益をこうむりはしないかと考える国民の憂慮が、杞憂に終わることを願う。
方炯南(バン・ヒョンナム)hnbhang@donga.com






