「皆さんの助けが必要です」。昨年4月、米メディア大手アメリカ・オンライン(AOL)タイム・ワーナーの役員が、アイビーリーグ(米東部の名門大学8校)経営大学院の学生たちを前に、こう呼びかけた。「AOLタイム・ワーナーを再生するための戦略コンテスト」が開かれた席でのことだ。インターネットブームがピークを迎えた2000年、オンラインサービス企業のAOLがAOLより4倍も大きいメディア財閥タイム・ワーナーを電撃的に買収した。過去最大の「メディアクーデター」に成功したのも束の間、その後は株価下落が続いた。このコンテストで2万ドルの賞金を手にしたハーバード大学女子学生チームの解決法は次の通りだった。「新旧メディアの合併によるシナジー効果だけに頼らず、それぞれのビジネス分野で収益を上げることに力を注ぐ必要があります」
◆しかし、AOLタイム・ワーナーは、どうも学生たちの純粋で的確なアドバイスに従わなかったようだ。新メディアの征服者であり、ネットのちょう児と言われたスティーブ・ケース会長が5月で辞任することになった。ケース会長の辞任は、新旧メディアの間違った合併がどのような結果をもたらすかということを象徴的に示している。1985年26歳の若さでAOLを設立した同氏は、ネットの驚異的な成長を明確に予測した革命家だった。「ドット・コム・ガイの勝利」とも言われ世界を驚かせたが、ごう慢さに陥り末路は悲惨なものとなった。ハイテクの「ネットDNA」を旧メディアのテレビや映画、雑誌、音楽などに組み入ればく大なシナジー効果をあげるというばら色の約束はまだ守られていない。
◆合併当時、「王冠の宝石」と言われたAOLは、ネットの生命と言えるスピードでユーザーのニーズに応じることができなかった。アクセスしようとしてもなかなかつながらない上、ライバル企業より料金も高かった。中身がしっかりしていなければ、新メディアと言えども、広告界や消費者に背を向けられるしかない。合併時56ドルだった株価は13日15.03ドルにまで落ち込んだ。こうした事態になるまで、何とか会社の命をつなげたのは、映画『ハリー・ポッター』『ロード・オブ・ザ・リング』、ケーブルテレビのドラマ『ザ・ソプラノス』、雑誌『ピープル』といった旧メディアのおかけだ。どんなに器がきれいでも中身が充実していないと意味がないという不変の真理を教えてくれたわけだ。
◆ケース会長の辞任が、巨大な象を踊らせることができるかどうかは、誰にもわからない。ケース会長の後を継ぐタイム・ワーナーの最高経営責任者(CEO)リチャード・パーソンズ氏がAOLを分離させるだろうという見方が早くも出ている。世界2位のメディアグループ「ビバンディ・ユニバーサル」、5位の「ベルテルスマン」の例からも分かるように、新旧メディアの合併は新メディアの失脚と旧メディアへの回帰となっているようだ。「メディアがメッセージ」とよく言われるが、メディアを動かすテクノロジーは、結局、手段に過ぎない。本当に大切なのはメッセージだということを改めて認識すべきだ。
金順徳(キム・スンドク)論説委員 yuri@donga.com






