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[オピニオン]人情あふれる国「アイラブ・コリア」

[オピニオン]人情あふれる国「アイラブ・コリア」

Posted July. 09, 2002 22:32,   

私は、全州(チョンジュ)市広報大使のキム・ソンユン氏の友人で、旧京城女子師範学校同窓会長のマツダ・カズコの夫です。先般、サッカーW杯の観戦に招かれて全州市を訪れた私たちは、広々とした湖南(ホナム)平野の豊かな自然に接し、人々との心温まる交流ができた。

韓国訪問は、6月5日から9日までの3泊4日の短い旅行だったが、この期間中に受けた第一印象は、日本がすでに失ってしまった美しい自然と温かい人情が、まだ残っていることに対する驚きだった。

初日、6月5日は、仁川(インチョン)国際空港から観光バスで西海岸高速道路を全州に向かった。海上に架けられた長い橋を渡った所の休憩所に立ち寄った。のどの渇きをいやそうと、売店で缶ジュースを買った。レジの前の長い列の後ろに立った時のことだ。

私の前に立っていた20歳ぐらいの青年が振り向いて、愛想よく「お先にどうぞ」と言って、順番を譲ってくれたのだった。「なんと素敵な若者なんだろう…。この先、韓国旅行でどんなに素晴らしいことが待ち受けているのだろう」と、期待感で心が弾んだ。

この日の夕食は、ホテルから車で数分のところにある韓国料理の店で食事をした。カルビ定食だった。

私は、普段メモ帳を持ち歩きながら、いろいろと心に留めておきたいことをその都度メモにとる習慣がある。この食事のときもテーブルに置かれた料理に目を奪われながらも、料理の名前や材料について一つ一つ聞きながらメモをとった。

食事を終えてホテルに戻ってからそのメモ用紙がなくなっていることに気づき、案内人に連絡して食堂に問い合わせてほしいと頼んだ。

そして翌日、W杯観戦の興奮が収まらず、大いに満足した気分で夕食を取るため食堂に向かう途中、前日食事をとった食堂の前に車を止めた。案内の人にお店に聞いてもらったところ「はい、大事なもののようでしたので…」と、とっておいたメモ用紙を手渡すのだった。そのうえ、そのメモ用紙はきれいにアイロンまでかけられていた。涙が出るほどありがたかった。

その日、サッカー試合を観戦するまで私たち夫婦は、全州市内にある朝鮮時代の古い遺跡を訪れた。全州客舎(ケクサ)の美しさに心をいやされ、豊南門(プンナンムン)の頑丈さに驚嘆した。

とりわけ、全州郷祠(ヒャンサ)では、心が落ち着くとともに、厳かな雰囲気の漂う堂屋(ダンオク)を見て周りながら、素晴らしい文化遺産に接した喜びを満喫した。

3日目は、ソウルのホテルの中で食事をとった後、パンソリという韓国の伝統芸能を鑑賞することができた。

出演された方は、人間文化財チョ・サンヒョン先生の弟子ムン・デスン氏と、さらにその愛弟子の5、6歳になる女の子2人だった。可愛らしい子どもが、時には激情的に、時にはゆっくりと、時には悲しげに、鼓動に合わせて春香伝(チュンヒャンジョン)を聞かせてくれた。口から出るものは、深い感動のため息と素晴らしいの一言だけだった。

「私の韓国訪問は、あまりにも密度の濃いものだった。再びこの国を訪れて、さらなる豊かさを味わいたい」。帰国する飛行機の中で、遠ざかる韓国の景色を眺めながら、この言葉を胸に深く刻んだ。

マツダ・トヨジ(日本人、76、東京都町田市鶴川居住)