いわゆる「スマート(smart)制裁」と呼ばれる米国と英国による新しいイラク制裁決議案が22日、国連安全保障理事会に提出された。
そしてロシアは同日、同決議案とは別に、国連がイラクに対して施行中の「食糧輸入のための石油輸出許可プログラム」を6ヵ月延長するよう求める内容の決議案を提出した。
英国が米国の支持を得てまとめた新しい決議案の内容は、食糧、医薬品など生活必需品のイラクへの流入を拡大させる一方、高性能コンピュータと通信装備を含む軍事関連品の禁輸は強化するというもの。
フセイン政権の戦争能力は徹底して封鎖する代わり、人道的な面で経済制裁によるイラク国民の苦痛を最小限にするという戦略で、部分的な制裁緩和策といえる。
同決議案は、これまで禁じられていた旅行客と貨物航空機のイラク往来を公式に認め、イラクが石油輸出代金の一部を国連機関に対する債務返済に充てることを許容している。
また、石油輸出代金については引き続き国連の統制下に置き、武器禁輸措置に対する監視は強化する上、不法的な石油輸出を徹底して取り締まる内容も盛り込まれている。
湾岸戦争を仕切った米国と英国が、このような新しい制裁決議案を示したのは11年間続いたイラクへの経済制裁が失敗だったことを間接的に認めたものと解釈される。
イラクに対する経済制裁は、イラク国民の蜂起に働きかけ、フセイン大統領を権威の座から引き摺り下す狙いから始まったもの。
しかし、所期の目的には達することなく、イラク国民ばかりに苦痛を強いる結果と、非難を浴びてきた。
フセイン大統領の強力な統治体制は依然として維持され、イラク軍部も圧倒的な威力を失ってはいない。フセイン政権は、国連の制裁にもかかわらず、隣接国家に公然と石油を売りさばき、経済制裁に反対する中国など一部国家からは軍事関連技術の支援も受けてきた。
国際原油価格が上昇する中、イラクの石油産業を凍結した経済制裁に対する世論の風当たりも強まってきた。これを受けて国連は、1996年の石油輸出禁止措置を緩和し、「食糧輸入のための石油輸出」を認めた。
米国の中東地域における影響力の拡大を恐れていたロシアは、昨年4月イラクより石油を密搬出していた自国のタンカー(油送船)が米海軍に抑留される事件以来、制裁措置を無力にするため数多の手を尽くしてきた。
今回、ロシアが別の決議案を示したのも米国の影響力が拡大するのを牽制しつつ、歴史的に維持してきた中東地域に対する影響力を失うまいとする意図があるように解釈される。
昨年秋、ロシアをはじめフランス、スペイン、エジプトなど一部国家の航空機が飛行禁止措置を無視しイラク領内に入ったことで、国連の制裁措置が無力なものになったこともある。
米国と英国による新決議案が審議に通るかどうかは現在、不透明な状態。安保理常任理事国の中でイラクを支持するロシアと中国が留保的な態度を示しているためだ。
当該国であるイラクもまた、既存のすべての制裁措置を解除するよう求め、今回の米国と英国の決議案に強く反発している。
フセイン大統領は21日、国営テレビに出演し「今回の決議案は、イラクに対する禁輸措置が失敗したことを表す宣言書だ」と主張した。
隣のヨルダンとシリア、トルコなどが英国と米国の新政策に協力する場合、石油輸出を中断すると威嚇した。
これに対して米国は、イラクと軍需物資の取引を中断する隣接国家には財政支援を行うとし、新決議案に賛同するよう誘導しているが、どれくらい実を結ぶかは未知数だ。
洪性哲 sungchul@donga.com






