北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記の今回の中国訪問は、今年の北朝鮮の対内外政策を占うことができる異例の行脚だ。南北首脳会談が開かれる2週間前、昨年5月末に中国を訪問していた金総書記が、韓国への答礼訪問を行う前にまた突然中国に行ったことは、急速に変わりつつある周辺事情に北朝鮮がそれほど敏感に対応していることの表れでもある。
第一に金総書記は昨年の中国訪問の際、北京のハイテク産業団地が密集している聯想地区を視察したが、今回も経済特区がある上海を訪問したところを見ると、金総書記の訪中の意図が何か察することができる。しかも金総書記は年初から経済重視政策を標榜し、‘技術改建’を強調していたところでもある。中国の経済改革と対外開放政策を北朝鮮にも適用してみようというのが金総書記の構想だろう。
第二に北朝鮮が対中外交を強化し、対米外交の方向を調節するための訪問だとも言えるだろう。まもなく新政権が始まるワシントンの周辺では、早くも今までの朝米関係に対する否定的な見解や国家ミサイル防御(NMD)構築問題など、平壌(ピョンヤン)や北京側の神経を逆なでするような意見まで聞こえ始めている。金総書記が年始から突然中国を訪問したのも、米国の新政権を意識し、中国との新たな外交協力体制を構築しようとする目的があるように見える。
いずれにしろ、金総書記が中国の経済改革と対外開放政策に関心を寄せて中国の指導部との協力関係を強化すること自体は、南北関係にもプラスの影響を及ぼすものと我々は判断している。中国はこれまで朝鮮半島の平和と安定が何よりも重要だという基本認識を持ち、4者会談などを通して積極的に仲裁者の役割を担ってきた。また北朝鮮の改革開放は我々が常に主張してきたことである。
しかし一方では、米国の新政権の登場と同時に米中間の摩擦構造がさらに深まり、それが朝鮮半島に否定的な影響を及ぼすのではないかという懸念があることも事実だ。ゆえに我々としては、北朝鮮と中国間の外交関係強化が今後の朝米関係において障害になってはいけないという点を強調せずにはいられない。
北朝鮮は年初から、自ら対南関係における速度を鈍化させるような動きを見せている。「6.15南北共同宣言の実践」をことさら強調していることも気になる。しかし何よりも大切なのは南北関係の本質的な変化である。金総書記の今回の訪中がその本質的な変化にも寄与することを願ってやまない。






