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婉曲な請願

Posted May. 12, 2023 08:14,   

Updated May. 12, 2023 08:14

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湖の丘と水平を成すほど水が膨らんだ8月の洞庭湖。水と空が接し、広大な天地を成す。水面上には蒸気が立ち込め、波は湖畔に隣接する城郭を揺るがすように打ち寄せる。この広大で活気ある世界に漕ぎ出したいけれど、残念ながら舟も櫓もない詩人。才能と志を発することができないまま、のんびりと身を潜めているのでは満足できない。釣りに専念する人々を眺めながら、魚に欲を出す自分が恨めしくもある。詩は淡々と洞庭湖の壮大な風景を描くことから始まるが、詩人は活気に満ちた世の中、この太平の御代の仲間入りを果たしたいという切実な願いを隠せない。

年齢や地位では詩人は丞相の張九齢に及ばないが、2人は詩で親密に交流してきた仲だ。詩人は大っぴらに頼むことは気が引けただろうが、詩を書いて権力者に自らを推薦することは、唐の士大夫社会では慣習のように通用した。これを干謁詩と呼んだ。「請願を恥ずかしく思う」と言った杜甫も、何度も高官に干謁詩を送った。「老いた千里の馬は千里を走ることだけを考え、飢えた鷹は一度だけ呼んでくれるのを待つ。貴殿が少しだけ心を配ってくだされば、草野の者には十分な慰めになります」(「佐丞韋済に捧げる」)と、焦燥感で自尊心さえも捨てさせたのが干謁詩だった。