5年前のベネズエラの大統領選挙は「美女と野獣」の対決だとして注目を集めた。ミス・ユニバース出身の美貌を誇る美女市長イレネ・サエス女史と元陸軍中佐で現役時代にクーデターを試みたウゴ・チャベス氏が競っていたためだ。サエス女史は、エバ・ペロンの美貌とマーガレット・サッチャーの情熱を備えたといわれる女性だった。選挙戦終盤で支持率が落ち込むまでは、世界最高の美女大統領が出る、といわれていた。この選挙戦で当選したチャベス大統領はどうも美女とは反りが合わないようだ。不正腐敗の一掃と政治経済の改革を公約して勝利を勝ち取ったが、その果敢な改革措置のために、今回はミス・ユニバースになれるかも知れない同国の美女の将来が閉ざされたのだ。
◆美しい栗色の髪の、今年のミス・ベネズエラは来月行われるミス・ユニバース大会の参加を見合わせることにした。厳しい外為規制政策のために、参加費8万ドルを調達できなかったのだ。チャベス大統領は今年初めに自身の辞任を要求するゼネストに対立して、自国通貨の下落とさらなる経済難を防ぐとして緊急外国為替取引規制措置を取ったが、この飛び火がここまで跳ねたのだ。美人大会に参加できないからと言ってどうってことはない、と思うかも知れないが、ベネズエラの国民はそうではないようだ。これまでミス・ユニバース大会だけでも4回、ミス・ワールド大会では5回も王冠をかぶった美女王国のプライドに疵がついたのだ。「金がなくて、我が国の女性が美人大会に参加できないのは、サッカー王国のブラジルが同じ理由で、ワールドカップに参加できないのと同じだ」とミス・ベネズエラ協会長が嘆いたほどだ。
◆ブラジルとワールドカップの喩えでもわかるように、かつてこれほどこの両国が比較された時もなかった。今年初めに就任したブラジルのルーラ大統領は、選挙運動の際に強調したポピュリズム(大衆迎合主義)を打ち捨てて、市場経済を重視する合理的な改革で国家経済を回復させている。これに比べてチャベス大統領は、過渡なポピュリズムと急進左派的な改革で、支持基盤である貧民層と側近を除く多くの人々から恨みを買っている状況だ。
◆国を悲しみに陥れた独裁者がもっとも嫌うのが批判的なマスコミだというのには、チャベス大統領も例外ではない。マスコミが反政府の感情を煽っているとして、今年を「マスコミとの戦争の年」と宣言した彼は、外為規制を口実に新聞用紙も輸入できないよう弾圧を加えている。とうとうミス・ベネズエラの悲しい知らせが外信に報道された翌日の17日には、テレビとラジオでの政府非難報道を禁止する法案を通過させた。これからは討論番組の出演者が政府を批判すれば、放送局のオーナーがその責任を取らなくてはならなくなった。放送局の社長を自分の息がかかった人を座らせばいいものを、どうしてあんな法まで作るのか理解に苦しむ。まったくおかしな国だ。
金順鄹(キム・スンドク)論説委員 yuri@donga.com