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[オピニオン]感傷的な反米主義

Posted March. 26, 2002 09:46,   

ある政治家の集いで、著名な保守政治家が、金東聖(キム・ドンソン)選手のショートトラックのレース以降、広がる一方の反米ムードに懸念を表明しながら「金メダルがそんなに重要だろうか。韓米同盟関係を危うくしてはいけない」と語った。しかし、オリンピックで金メダルを奪われながらも、血盟との友ぎのためには我慢しなければならないという論理や、米国に対する批判をすべて危険視する見方には、問題がある。若い選手が、4年間汗を流して努力した成果を、審判の誤った判断によって奪われたとすれば、国民全体が憤りを感じて当然だろう。

4日前のレースで、怪我を押して出場し優勝を手にした19歳のアントン・オノ選手は、米国では一躍ヒーローにのし上がったが、韓国では金メダルを盗んだ狡かつな詐欺師になってしまった。果して、オノ選手がハリウッドアクションでだましたのだろうか、それとも、金選手がクロストラック(進路妨害)を犯したのだろうか。

冬季五輪が開催された米国のソルトレーク市を訪れた韓国スポーツ界関係者らによると、レースを観戦し、ビデオテープを検証した専門家たちの間でも、意見が分かれたという。韓国人の専門家の中にも、誤審ではないという見方を持った人がいたそうだ。ところが、どとうのように押し寄せる愛国的フィーバーを前にして、叩かれる覚悟でもしない限り、そのような話はなかなか切り出し難いはずだ。

意見を言うのは自由だが、事実は神聖なものだ。韓国人なら誰でも、金メダルの持ち主は金選手だと信じたいものだが、愛国心というフィーバーは、実は判断の目を濁しかねない。

金選手に失格の判定を下した審判は、オーストラリア人である。とすれば、反米ではなく反豪をして当然だろう。しかし、韓国人の願いに反して、オーストラリア人審判の判定が正しかったとすれば、我々はソルトレークのアイスリンクで誕生した米国のヒーローを、誤った事実認識にもとづいて、無慈悲にもじゅうりんしたことになる。

金選手の事件以来、ネット上のサイトには、100以上もの反米サイトができた。ブッシュを叩きのめして、ば声を浴びせる動画を見て皮肉る人も多い。ネット上で流行っている反米の歌は、米国が金メダルを奪ったものと断定づけては、米国を「泥棒」「強盗」などと、ののしっている。

ショートトラックでの誤審を認めるとしても、すぐさま南北の平和共存と統一の邪魔をする「ヤンキー」を追い出すべきだ、という結論に持っていくのは、あまりにも行き過ぎと言えよう。

米国は、ブッシュ政権の発足以来、気候条約からの脱退、戦術核の使用検討、鉄鋼に対する緊急輸入制限措置を取るなど、一方的な政策で世界中の非難を浴びている。これについては、我々も手をこまねいてはいられない。かつて、反米は即ち北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)のためになることだとして、国家保安法違反の名目で逮捕したこともあったが、暗うつな時代の法律の誤った適用例だった。

競争力の劣る鉄鋼産業を保護するために、輸入鉄鋼に30%もの高い関税の壁を設けるのは、世界の自由貿易の秩序を乱す一方、米国の国民全体の利益にも反するものである。テロとの戦争の最中、国際的な協力を受けなければならない米国が、このような行動に出てはいけない。しかし、韓国にとって、報復の手段がままならない。わが国の輸出が、米国市場に頼りっきりであるからだ。どうしようもない現実である。

米国を批判するのも良し、なくした金メダルに対する腹いせもできようが、確かな事実と現実認識にもとづいていなければならない。親米の代わりに用米という言葉もある。米国がリードする国際秩序の流れに、機敏に対応して実利を追求することは、事大主義でもなければ敗北主義でもない。現実に目をつむった感傷的な反米は、時代錯誤な国粋主義との非難を浴びる可能性がある。

黄鎬澤(ファン・ホテク)論説委員