
—今年9月からハーバード大学に入学すると聞きました。準備はどんな具合ですか。
「そうですね。行って見ないとわかりません。ところで先にお知らせしなければならないことがあるんです。入学は今年の9月ではなく、来年になるかも知れません。今、ハーバード大学の教務課と相談しています」。
—理由は。
「SAT(米国の大学入試学力評価試験)で良い成績を取ったおかげで、ハーバード大学の方から先に入学しないかと言われてすぐ進学を決めたんですが、今はコンサートのスケジュールがハードで、いろいろ困っています。大学に行くと、寮で生活しなければならないし・・・。それで、1年ほど調整期間を持った方がいいんじゃないかと思ってます」。
—大学では何を専攻に。
「人文学の方ですね。哲学や文学になると思います。指揮者のローリン・マゼールなど音楽界の先輩たちが、『アーチストとして、内面的な成熟のために人文学を勉強しなさい』とアドバイスしてくれました」。
—最近は読書に励んでいると聞きましたが、どんな本を読みましたか。
「今読んでいるのは、トルストイの『芸術論』、ヴァージニア・ウルフの『ジェイコフの部屋』です。トルストイの『芸術論』はそうですね、うーん、道徳主義的なようですね」。
—暇な時間にはどんなことをしながら過ごしてますか。
「ローラブレイドを楽しんでます。うちの近くにすばらしく景色のいい湖があるんですが、湖の涼しい風に当たりながら回っていると気持ちもさわやかになります」。
—最近、指揮者のジュゼッペ・シノポリが心臓麻痺で急に他界しましたが、ハンナさんはシノポリといっしょに演奏をよくしたようですが・・・。
「私を早くから指導してくださったロストロポービィッチ先生やマイスキー先生もそうですが、シノポリも私にとって精神的に父のような方でした。共演の時は、『私のためにアンコールをしてほしい』と注文なさって、アンコールを演奏している間、舞台裏に退場なさらないで、立って私の演奏を聞いたりしてくださったものでした」。
—具体的にどんな教えを受けましたか。
「例えば、シューマン協奏曲を共演する時、ドレスデンでシューマンが歩いた道を教えてくださいまして、その道を歩くと曲の解釈によい考えが浮かぶだろうと言ってくれました。ドイツロマン派の絵本もプレゼントしてくださいました。こんなふうに作品背景に対する理解を強調してました」。
—最近、ソプラノの鉠秀美(チョ・スミ)さんはフランス人のナタリ・デセイがライバルだと語りました。声の特徴やレパートリがほぼ同じで、レコーディングを活発にしているからでしょうが、ハンナさんにライバルがあるとしたら、どなたでしょうか。
「デカルトがこう言ったそうですね。『同じようなものが二つあれば、本能的に比べるようになる』と。でも、比べたりすると、どうしてもそれぞれ自分が持っている本質から外れてしまいます。音楽家たちの間の競争は、自分との競争で、意識してライバルを決める必要はないと思います。秀美さんの場合は違うと思いますが」。
—次のレコードを多くのファンが待ち望んでいますが。
「プロコフィエフのチェロソナタと、『シンフォニア・コンチェルタンテ』のレコーディングに入ります。『シンフォニア』はアントニオ・パッパーノが指揮するロンドン・シンフォニ−・オ−ケストラと共演することになりました。来年3月にレコーディング作業に入ります」。
言葉の端々からすっかり大人に成長したハンナ・チャンを感じとることができる。
ハンナ・チャンの全国ツアー・コンサートは8月13日大邱(テグ)市民会館、14日蔚山(ウルサン)の現代美術館、15日清州(チョンジュ)の芸術の殿堂、17日春川(チュンチョン)のペクリョン文化館、18日ソウルの芸術の殿堂のコンサートホール、20日釜山(プサン)の文芸会館、21日水原(スウォン)の京畿道文芸会館で開かれる。開幕時間は午後7時半。リヒャルト・シトラウスのソナタ作品6番、シューマンの『幻想小曲集』作品73番など、二つの大曲とラフマニノフの「ヴォカリーズ」など小品7曲が準備されている。ピアノはダリア・ホボラ。ソウル公演は02—580—1300、2万〜7万ウォン、地方都市の公演02−720−6633
劉潤鐘 gustav@donga.com