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アルプス、ヴェネツィア、恍惚とした旋律が導く場所へ

アルプス、ヴェネツィア、恍惚とした旋律が導く場所へ

Posted January. 28, 2023 08:57,   

Updated January. 28, 2023 08:57

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作ってから3世紀以上経ったが、依然として現役であるだけでなく、最上の品質と評価される道具がある。ストラディバリ家に代表される、イタリア・クレモナ産のバイオリンだ。アントニオ・ストラディバリが1716年に製作した「メシア」バイオリンは、2000万ドル(約250億ウォン)以上の価値を持っていると評価される。

イギリス人で、イタリア文化の専門作家である著者は、ウェールズのある小さな村のコンサートで聞いたバイオリンの音に、厳密にはその日演奏された楽器に魅了された。演奏者はこの楽器を元所有者の名前にちなんで、「レフのバイオリン」と呼んだ。彼から「ロシアで購入した。クレモナで製作された楽器だが、価値はないという判定を受けた」という話を聞いた著者は、この楽器と同時代のクレモナ楽器が経た旅程に沿って足を運ぶ。

クレモナでバイオリンの伝説と呼ばれるアマティ、ストラディバリ、ガルネリ家の跡を見て回った後、これらの楽器の前板を供給したイタリア・アルプスのエゾ松の森を訪れる。木々は、ポ-(Po)川に沿ってヴェネツィアに移され、ここの商人たちが最上の木を選別した。楽器と帆船のマストは、いずれも節目のない木を使わなければならなかったからだ。

バイオリンの製作がイタリア全域に拡大し、クレモナの名匠が消えた後の話は楽器取引業者とコレクターが代わりにする。次の世代の楽器名匠グアダニーニは、富豪のコツィオがクレモナの高級楽器を収集することを手助けし、コツィオが所有する高級楽器は19世紀初頭、楽器商のタラシオの手を経て、フランスの名製作者ヴィヨームに引き継がれる。このように高級楽器の「流浪史」を調べた著者は、レフのバイオリンがロシア南部まで流れてイギリスに来ることになった経路も隅々まで探索する。

レフのバイオリンの本当の正体は虚しかった。指紋のように年輪をスキャンして、成長年代と地域を明らかにする年輪年代学の専門家は、この楽器はクレモナ産ではなく19世紀半ばのドイツ産楽器だと判定した。しかし、この楽器を巡る格別な情熱は、著者にバイオリンに対する巨大な知識と思い出を、私たちにはこの本を与えてくれた。原題は「Lev's Violin'(2021)」。


ユ・ユンジョン記者 gustav@donga.com