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最も悲しい自画像

Posted March. 14, 2024 09:02,   

Updated March. 14, 2024 09:02

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若い女性が片手に花を持ち、もう片方の手は突き出たお腹の上に置いている。妊婦と思われる。堂々とした強烈な眼差しで画面の外の観客を見つめるこの女性は誰か。彼女が手に持っている2つの花は何を意味するのだろうか。

この絵は、ドイツの画家パウラ・モーダーゾーン=ベッカーが描いた「左手に2つの花が咲く自画像」(1907年・写真)だ。モーダーゾーン=ベッカーは多くの自画像を残した。彼女の自画像は、他の画家のものとは異なり、「初」という修飾語が多く付く。30歳になった1906年、彼女は自分のヌード画を描いた。美術史上初めて女性が描いたヌード自画像だ。

この絵も、妊娠した状態の画家が描いた最初の自画像だ。女性は正規の教育を受けることができなかった時代に、モーダーゾーン=ベッカーは個人指導で画家となり、ブレーメン近郊の美術共同体の村で活動した。ここで画家オットー・モーダーゾーンと出会い、結婚した。しかし、創作に没頭するために一人でパリに渡ったが、貧しさに耐えられず再び夫の元に戻り、すぐに妊娠した。この絵を描いた当時、画家は生まれてくる子どもへの期待に胸が膨らんでいた時だった。

花は愛と豊穣を象徴している。2つの花は、創造と受胎の喜びを表現しているのだろう。厚いまぶたとピンク色の顔は仮面のようにも見えるが、眼差しは自信に満ちている。同時代に活躍したピカソやマティスが描いた女性の姿とは全く異なる。全く理想化しておらず、男性の視線に合わせた官能美もない。ありのままの姿を見せている。それは女性画家であり、母親としての堂々とした自尊心の表現だった。

モーダーゾーン=ベッカーは出産後も創作活動を続けたのだろうか。残念ながら、この絵は彼女が残した最後の自画像となってしまった。絵を完成させた年に娘を出産したが、出産の合併症で19日後に命を落としたからだ。31歳だった。この絵は最も幸せな時期に描いた最も悲しい自画像になってしまった。