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「泣き虫」孫興民、涙の心理学

Posted November. 09, 2019 08:40,   

Updated November. 09, 2019 08:40

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123点目を挙げ、「チャブム」車範根(チャ・ボムグン)氏(66)が保持していた韓国人の欧州リーグ得点記録(121得点)を超えた孫興民(ソン・フンミン=27、トッテナム・ホットスパー)の異名は「泣き虫」だ。「ソンセーショナル」「スーパーソン」などのニックネームもあるが、涙もろい姿からつけられたものだ。勝った時は喜びの涙を、負けると悔しいあまり涙を流した。このため、一部のファンからは、サッカーはうまいけど「メンタル」が弱いのではないかと懸念する声もあがった。しかし、孫興民の涙は、心を浄化する「カタルシス」であると同時に、もうワンステップ成長させる滋養分だった。

4日、リバプールの敵地グディソンパークで行われたイングランド・プレミアリーグ(EPL)第11節エバートン戦でも孫興民は涙を見せた。エバートンのアンドレ・ゴメスに後方からタックルを浴びせた後、倒れたゴメスが大ケガをしたことに気が付くと、打ちのめされて涙を流したのだ。体を震えながらゴメスをまともに見ることもできなかった孫興民はレッドカードを提示され、泣きながらピッチを後にした。これだけショックなら、しばらくは自分のプレーは難しいだろうと懸念する声が広がったが、孫興民は健在だった。7日、セルビアのベオグラードで行われたツルベナ・ズベズダとの欧州チャンピオンズリーグ(CL)グループリーグ(4-0勝)で2ゴールを決め、「チャブム」を超えた後、ゴメスの回復を祈る「祈祷」パフォーマンスまでする余裕を見せた。ファンの憂慮を一気に払拭するパフォーマンスだった。

スポーツ心理学では、孫興民のように感情を表に出すことに慣れている選手は、ストレスや危機的状況を早く克服するという研究結果がある。中央(チュンアン)大学スポーツ科学部のカン・ソング教授(スポーツ心理学)は、「孫興民が世界トップリーグえ活躍しながら、競技力だけでなく世界的な選手たちの危機対処や管理能力も学んだから、早い回復が可能だった」と分析した。孫興民本人も感情を隠さないで表に出した方がプラスになっていると話した。孫興民は、男子向け雑誌のインタビューで、涙が多いという質問に「自分の自然な姿をファンに見せることが大事だと考えている」とし、「そうすると楽しい時に楽しい気持ちを共有できるし、悲しい時は人々と一緒に悲しみながら慰められる」と話した。

それでか。孫興民は、大一番で良く涙を流したが、その次の試合で達磨のように起き上がった。2014年のブラジルワールドカップ(W杯)ではベスト16で敗退した後に号泣した「泣き虫」の異名が付けられるきっかけとなった。しかし、2018年ロシアW杯では後半ロスタイムに50メートル以上を全力疾走して2点目を奪い、史上初めてドイツをW杯グループリーグで撃沈し、「カザンの奇跡」を作った。2015年に豪州で開かれたアジアカップ決勝では、延長戦の末に1-2で惜しくも敗れた後も涙を拭いたが、3年後の2018年ジャカルタ・パレンバン・アジア大会では後輩たちを率いて金メダルを獲得し、アジアの頂点に立った。孫興民の涙は、決して諦めや失敗を意味するものではなかったのだ。


李沅柱 takeoff@donga.com