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犬ガム・ユートピア

Posted May. 02, 2019 08:51,   

Updated May. 02, 2019 08:51

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人間は誰もユートピアを夢見る。現実にはない世界なので渇望するのかもしれない。1516年に出版されたトマス・モアの『ユートピア』は、自由と平等を最優先に追求する公正で豊かな理想国家を描いている。むろん、全くそうではない絶望的な現実に対する批判のために考案された概念だった。人類は明らかに去る数世紀の間、驚くべき発展と変化を遂げたが、果たしてユートピアに少しでも近づいたのだろうか。

中国の現代アーティスト、リウ・ウェイは、21世紀のユートピアを再現し、その解答を提示する。絵画からビデオ、彫刻、大型設置まで様々な媒体で作業してきた彼は、様々な日常の材料を利用して都市というテーマを表現してきた。この巨大な設置作品は、政治、宗教、文化を象徴する世界各国の有名建築物でできた仮想の都市で、権力のユートピアを意味する。コロシアムからグッゲンハイム美術館、サン・ピエトロ大聖堂、天安門、国連本部、米国会議事堂まで、権力と欲望を象徴する世界的な25の建築物の模型で構成されている。そこには、韓国の国会議事堂もある。

ところで、これらの建築物が持つ強大な力と重要性は、アーティストが選択した材料のために一瞬にしてコミカルで粗雑でたいしたことがないものに転落してしまう。まさにペット用品店で売られる「犬用ガム」で作られたためだ。牛の革で作られた犬のガムは、犬がかんだり遊んだりするおやつでありおもちゃだが、ここでは権力のユートピアを作る都市建築の基本材料に使われた。

16世紀のトマス・モアは、現実を批判しながらも理想社会を夢見るよう勧めたが、21世紀のアーティストはいかなるユートピアも不可能だと宣言するようだ。今日の世界が権力者だけに理想郷なら、いっそ犬にやってしまいたかったのか。作品の題名は「気に入ったか!食べてみろ!」。この命令語が向かう対象が権力に目がくらんだ人々なのか、空腹な犬なのかは分からないが、恐らくアーティストは2つの対象から共通点を見出したようだ。