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米シリコンバレーで起こる「新スパイ戦争」

米シリコンバレーで起こる「新スパイ戦争」

Posted August. 04, 2018 08:46,   

Updated August. 04, 2018 08:46

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「中国は、米シリコンバレーなどに数兆ドルを投じて先端技術を引き出し、米国が占めたこの分野の王座を狙っている」

米国と中国の貿易戦争が激しさを増している6月19日。米国の代表的な対中強硬派で対中貿易戦争を率いているピーター・ナバロ大統領補佐官(貿易政策担当)兼国家貿易委員会(ITC)委員長が、FOXニュースで7分以上発言した内容の核心だ。

ホワイトハウスは同日「中国の経済的侵略」を批判する35ページの報告書を発表した。報告書は、「中国の国家安全部が配置した4万人以上の産業スパイが世界をさぐっている」主張した。

米国を狙った中国とロシアの最近の諜報活動は、冷戦時代のスパイ戦争を彷彿とさせる。過去がイデオロギーをめぐる角逐戦だったとすれば、「新スパイ戦争」は、先端産業の情報技術をこっそりと盗むことに任務の焦点が変わった。おのずとスパイの活動地域も世界の政治の中心であるワシントンから世界情報技術(IT)のハブで通じるシリコンバレーに移動している。

●スパイの新たな拠点、シリコンバレー

冷戦が始まって以降60年余りの間、旧ソ連などスパイの主要舞台は米東部だった。政府機関と各国大使館が密集したワシントンや国連本部があるニューヨークなどだ。今は米西部都市のサンフランシスコのシリコンバレーで活動する中国、ロシアのスパイが増えている。米国の政治専門メディア「ポリティコ」によると、米連邦捜査局(FBI)が捜査・内偵する産業スパイ事件の20%がこの地域で発生した。

シリコンバレーには、アップル、マイクロソフト(MS)、フェイスブック、グーグルなどグローバルIT企業の本社が密集している。全世界で創業が最も活発に行われる所でもある。スタートアップ特有の開放的で実験的な文化とともに、全世界から集まった人材でコスモポリタンの雰囲気があふれている。ある元米情報機関要員は、「セキュリティシステムを置かず、職位に関係なくあちこち移動するスタートアップ文化がスパイの浸透を招いている」と指摘した。

西部に舞台が移り、活動の様相も変わった。ワシントンやニューヨークではスパイは主に外交軍事機密や政界の情報をさぐったが、シリコンバレーでは通商機密や先端技術情報を「えさ」と見る。

過去の典型的な情報要員は、大使館や領事館に基盤を置いて身分を偽って活動した。しかし、シリコンバレーのスパイは「専業スパイ」ではなく留学生や研究員、訪問教授など合法的な身分の人々だ。彼らは、本国の研究所や国営企業から産業技術を引き出す方法でスパイ活動をする。米国のビザがるうえ、諜報活動が日常生活の中で密かに行われるので、事実上、あまり目につかない。

米政府と取引するシリコンバレーのあるクラウドサービス業者のセキュリティ担当責任者は、「賢く良心的な中国系の職員が中国政府と関係があったことがある。今は特定のプロジェクトに限って米市民権者の職員だけを参加させる」と話した。

● 中ロ「テック企業を狙え」

冷戦時代、米国と共に情報戦の2大強者だったロシアは、スパイ活動の拠点にベンチャーキャピタルや投資会社を活用している。スタートアップを思うままにする資金源を握り、民間と軍事分野いずれにも適用できる技術を狙う。

米紙ワシントン・ポストは、最近FBIに逮捕されたロシアの「美女スパイ」マリヤ・ブティナ(29)が、ロシアの億万長者、コンスタンティン・ニコライェフに金銭的支援を受けたと報じた。ニコライェフは、シリコンバレーのスタートアップなど米IT企業に投資している人物だ。

ロシアは、政府所有のベンチャーキャピタルの現地法人「ルサノUSA」を産業スパイの根拠地に活用しているという疑惑を受けている。ある元米情報機関官僚は、ポリティコに「ルサノUSAは、表向きはベンチャーキャピタル会社として活動しているが、密かに情報収集を行ってロシアに協力的な人材を供給する役割をしている」と話した。ロシアがこの会社をシリコンバレーで人脈を広げることに活用しているということだ。

むろん、古典的な手法である「つつもたせ」でテック企業やベンチャーキャピタル会社の役員を攻略したりもする。シリコンバレーやサンフランシスコ市内にある超一流ホテルのバーが主な活動舞台に選ばれる。ロシアや東欧出身の高級売春婦が企業の役員と「濃密な」話をするのに動員される。元米情報要員は、「スパイが直接企業内に浸透する必要はなく、機密情報に接近できる内部の要人を抱き込めばいい」と話した。

中国も、シリコンバレーを対米諜報活動の戦略拠点としている。シリコンバレーがあるカリフォルニア州に中国の国家安全部傘下の担当組織まで置いたという話もある。

中国はスパイ戦でも特有の「人海戦術」を展開する。シリコンバレーで活動する中国出身の企業家、エンジニア、留学生、旅行客などを抱き込んで情報獲得の窓口にしている。

実際、中国の留学生と華僑が産業スパイとして活動して検挙されることがしばしば起きる。先月7日、元アップルのエンジニア、チャン・シャオランがアップルの営業機密を密かに盗み出した疑いで出国直前にFBIに逮捕された。チャン容疑者は、25ページにのぼるアップルの自律走行車の回路基板の青写真を自分のノートブックにダウンロードし、中国自動車会社に転職しようとしたが捕まった。

中国が情報収集のために動員する資金も莫大だ。英フィナンシャル・タイムズによると、2015~2017年、米国で創業初期のテック企業に投資したベンチャーキャピタルの16%が中国資本だった。資金調達のために核心技術も露出させる米国のスタートアップこそ中国資本にとって最適の獲物になっているのだ。米投資銀行インフルエンスのパートナーのプルアー・ストーンは同紙に、「数年前、中国投資家から1ヵ月に3、4回、アップルの協力会社に投資したいという電話がかかってきた。今考えると投資の意図は疑わしかった」と打ち明けた。

●情報戦も米中2強で再編

世界の秩序が米中2国(G2)体制で再編され、スパイ戦の構図も過去の冷戦時代の米ロ対決から米中対決に移る様相だ。中国は、情報機関の力量が米国とロシアに比べて劣るが、政府をあげて力を入れている。鉄鋼や豆などをめぐる米中貿易戦争の中、ホワイトハウスが中国の産業スパイ活動を一つ一つ記録した報告書を発表したことは、中国の情報戦に対する米国の危機感を示す。

米国家情報局の国家情報セキュリティセンターが7月26日に出した報告書「2018年サイバー空間での外国産業スパイの実態」も中国を最も脅威的なスパイ国家に挙げた。報告書は、「中国はベンチャー合作、共同研究、人材募集、企業買収など様々なルートを総動員して、米国から情報を盗み出してきた」と指摘した。

中国の攻勢的な情報戦に危機感を覚えた米国も、諜報予算を大幅に増している。米下院は連邦政府の17の情報機関に2018年と2019年の会計年度2年間で計1700億ドル(約190兆4000億ウォン)以上を投じることを決めた。

第4次産業革命による「技術戦争」の時代は、シリコンバレーの世界的な影響力が大きくなり、この地域で中国の情報戦と米国の防諜戦も一層激しくなる見通しだ。元米情報機関要員は、「蛾が光の周りに群がるように、各国のスパイがシリコンバレーに集まるだろう。シリコンバレーが今後、米中いずれが最強であるかを決める戦争の一断面を見せるだろう」と見通した。  


洪壽英 gaea@donga.com