北京五輪が生んだ悲運のスターは、ほかならぬ「黄色弾丸」の劉翔だ。劉翔の「翔」は、「高く飛ぶ。走ってゆく」という意味であり、名前からみても生まれつきの短距離選手だ。黄色人種は短距離に弱いという通説を覆して、04年のアテネ五輪110メートル・ハードルで金メダルを獲得した時、中国人は熱狂した。当然、広告の契約は殺到し、出演料も高騰した。豪宅を購入し、高級外車を乗り始めた。
◆劉翔が19日、足首の怪我を理由に試合を棄権すると、13億の中国人は失望やショックで言葉を失った。それは当然のことである。もし、競泳の朴泰桓(パク・テファン)選手がそうだったなら、我々はどんな気持ちになっただろう。劉翔の試合の棄権で、同氏と広告契約を結んで撮影を行っていた多くの企業も打撃を受けている。ナイキやビザカード、コカコーラ、キャデラックなど20あまりの企業が、被った損失だけでも10億元(約1500億ウォン)と試算される。こうなると、非難の矢面は劉翔にも向けられた。「それほどの多くの広告撮影のため、練習する時間すらなかっただろう」というわけだ。
◆スポーツスターが度を過ぎて、商業的に利用しようとした中国社会の責任も大きいという自省の声も出ている。劉翔はアテネ五輪の直前までは、1、2の広告にのみ出演したが、北京五輪が近づくにつれ、彼の出ないテレビ広告を数えたほうが早いと言われるほどだったという。劉選手は今回、文大成(ムン・デソン)選手が、当選した国際オリンピック委員会(IOC)の選手委員にも立候補した。あれほど多忙だったため、練習をおろそかにせざるを得なかったにも関わらず、国民の期待はさめなかったため、怪我のことすら公開できなかったのではないか、という指摘も出ている。
◆我々もこのような問題から自由ではない。朴泰桓選手のスポンサー企業が、オリンピック期間中、彼の出る広告を撮影しようとしたという話が、出回っていたためだ。朴選手が試合後、急いで帰国しようとしたのもそのためだったという。今、考えれば気が遠くなる。IOCは、オリンピック期間中、選手の商業的な活動を禁じている。これを違反すれば、メダルは奪われることになる。企業はスポーツスターを広告に利用したがるし、スターはこれを通して、これまで流してきた汗への見返りを受け取りたいだろう。でも、お互いに自制すべきだ。やや間違えれば、選手の生命も絶たれ、広告もだめになりかねない。
鄭星姫(チョン・ソンヒ)論説委員 shchung@donga.com






