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幻の伝統コーティング剤「明油」を現代科学で再現

幻の伝統コーティング剤「明油」を現代科学で再現

Posted February. 03, 2017 08:35,   

Updated February. 03, 2017 08:36

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「宮殿の塗り直しを命じたが、明油400斗を使った」

朝鮮王朝実録にある太祖(テジョ)13冊の記録だ。太祖の宮殿の丹靑に明油を塗った。エゴマ油にミルタスン(一酸化鉛)、滑石(脆くて柔らかいケイ酸塩の鉱物)、白礬(明礬石を加工して得た結晶型の薬剤)を入れて、弱火で煮たという。

明油とは、木材建築物や丹青に塗るコーティング剤であり、炒らなかった生のエゴマを絞った油を乾かしたものだ。水分のために木材が腐るのを防いでくれる。明油製造の職人が徐々に消えてしまい、明油は文献の中にだけ残っている。約600年が過ぎて、科学者たちの手によって明油が生まれ変わった。

平均年齢59.8歳。韓国科学技術研究院(KIST)で、平均年齢が最も高い研究者らが集まって立ち上げた韓国伝統文化技術研究団が、史料を基に明油の復元に成功した。

ナム・ギダル責任研究員は、「文献では熟練した主婦のレシピのように、『明礬を少し、ミルタスンは多めに、滑石は少なめに』のように、曖昧に表現されている」と言い、「80回以上の実験の末、現代的に明油を再解釈することができた」と話した。

研究チームは、エゴマ油と一緒に入れた白礬やミルタスン、滑石が反応を促す「触媒」の役割を果たし、明油を煮詰めながら攪拌する過程が酸素を供給する役割を果たすことを突き止めた。これに着目して、99.9%の純粋な酸素を投入して、80〜120度の高温で沸かし、触媒なしに明油を製造することに成功した。伝統文物を復元する一方で、現代科学の力を加えて環境に優しく「アップグレード」させた。触媒の入らない復元明油は、歴史の中の明油よりも透明な色をしていると、研究チームは説明した。

ナム研究員が、作った明油を木材に塗って水を落とすと、水が染み込まず滴を作って流れた。透明な色のため、木材本来の木目や色を楽しむことができるという利点もある。

ホン・ギョンテ責任研究員は、「最近、使われている石油化学コーティング製品は、揮発性有機化合物(VOC)が出ているのでアトピーなどを誘発するが、今回開発した復元明油は、エゴマ油で作ったので安全だ」と強調した。氏はさらに、「まだ量産技術を開発しなければならないが、伝統を発展させて良い製品を作ることも意味あることだ」と主張した。

研究チームは、伝統鍮器(真鍮で作った器)の再解釈にも成功した。 伝統鍮器は、食べ物がなかなか腐らないので保管しやすい。銅成分そのものにバクテリアをなくす性質があるからだ。しかし、銅と錫を溶かす過程で気泡が多く発生する。形を作る過程では割れやすく、気泡の穴が残るので、ペーパーで表面を滑らかにしなければならないという問題がある。

伝統製法では、わらを入れて溶液中のガスを抜き取る。研究チームはその代わりに、「脱ガス制」を添加した。材質がさらに硬くなり、鋳造過程でもなかなか割れない。今は1キロに100ミリ程度の少量の気泡だけが残るが、今後、気泡そのものがまったく生じない伝統鍮器を作るのが目標だ。ハン・ホギュ団長は、「伝統素材を現代技術と融合すれば、韓国文化が再生産され、新しくてより良いものを創造するのに貢献できる」と話した。



クォン・イェスル東亜サイエンス記者 yskwon@donga.com