「ルターのパトモス島」は、ルターの劇的な改革の場面を見られない。このノンフィクションが扱う時期は、ルターがドイツのアイゼナハ付近のヴァルトブルク城に隠れていた1521年4月から1522年3月までだ。破門勅書を受け取ったルターがヴォルムス帝国議会で立場を明らかにした後だ。
タイトルの「パトモス島」は、使徒ヨハネがローマ皇帝の迫害によって島流しにされた所だ。ヨハネ黙示録が書かれた場所でもある。自分が潜伏したヴァルトブルク城を「私のパトモス島」と呼んだルターは、ここで自分が属する宗教の基本的な質問と向き合うことになる。宴を開いて華やかな教会を建てることに大金を使い、金で聖職を取引した時、ルターは信仰の根本に戻ろうとする。
著者は、この時期のルターが孤立と孤独に苦しみ、信念も揺らいだことをストレートに描いた。
この時期はルターの生涯で全く動きがなかったように見られるが、著者が見て最も創造的な時間だ。ルターは友人と手紙を交わし、宗教改革の方向について悩み、手紙や講演集、論文など様々な文を休むことなく書き、ドイツの民衆のために聖書を翻訳した。この大きな基盤と共にその後に繰り広げられる宗教改革は、危機に直面した韓国社会に変化と改革のメッセージを投じるという点で今でも意味がある。
金志映 kimjy@donga.com