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ドイツの医学生の20%は救急隊員・看護師出身

ドイツの医学生の20%は救急隊員・看護師出身

Posted May. 08, 2024 09:30,   

Updated May. 08, 2024 09:30

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ドイツには医学部に行くには3つの道がある。第一は成績。大学入学共通テストに似たアビトゥール(Abitur)の点数順に選抜する。こうして選抜される割合は、全体の20%だ。最も比重の大きい60%は、大学の自主性に任せる。残りの20%を選ぶ方法が独特で、「待機期間選考」というのがある。志願者のうち、最長7年以内で長く待った順に入学させる。ここで重要なのは、医療・保健関連の経歴だ。救急救命隊員や集中治療室の看護師、療養病院の看護助手、助産師など、現場経験が豊富であればあるほど加点が高く、主に医療経験者が志願する。ドイツの医学生の5人に1人は、この選考で入学した救急隊員・看護師出身者だ。

ドイツでも医学部入試は厳しい。限られた機会をどのように配分するかをめぐって、ドイツが悩んだ結論がこの選考だ。医師になる道は多様であるべきであり、成績優秀でなくても患者をケアする使命感と情熱が強ければ入学資格があると考えるのだ。入学者が医学部の勉強についていけないという懸念もあったが、それは杞憂だった。医師国家試験で多数が脱落する中、待機入試出身者の合格率は他の経路の入学者に劣らない。医学部の勉強に耐えられるなら、医療現場で自分の適性を検証し、患者に対する理解を深めた学生がより良い医師になれるというのがドイツ人の認識だ。

2年前、ドイツで医学部増員が推進される時だった。コロナ禍で医療人材不足を実感し、約1万人の入学定員を50%増やすことにした。ドイツは人口当たりの医師数が韓国より2倍以上多い。そこでさらに増やすとは、医師たちが反発しそうなものだが、多くが賛成した。医師の業務が過重で、医療サービスの質が低下するというのが主な理由だった。ドイツの医師たちは、追加供給される医師を競争相手ではなく、患者を分担する仲間として見ているのだ。

医師はドイツでも高収入の職業だ。労働者の平均賃金に対する医師の所得は5.6倍で、経済協力開発機構(OECD)加盟国のうち3位だ。1位(6.8倍)の韓国との差はあまりない。ドイツの医師が医学部増員に関して韓国の医師と考え方が異なるのは、医学生時代の経験の影響もあるようだ。様々なバックグラウンドを持つ同期、特に患者のそばで悪戦苦闘して医療の現場で働いてきた仲間と共に学び、修練すること自体が生きた素養教育だ。全国の「全校トップ」が集まり、エリートとして集団的な自意識を構築していく韓国の医学生とは異なるほかない。

「国民は『全校トップ』の医師を望み、実力が足りない医師を望んでいない」。韓国で医学部増員が推進されると、一部の医師はこのような反対の論理を展開する。成績で並ぶ医学部入試が何十年も続いてきたことを考慮すれば、理解できないわけではない。狭き門をくぐり抜けて苦労して勉強し、様々な非人間的な扱いを受けながら修練してきたのに、今更門戸を広げると言うのは容易に同意できないだろう。

政府の今回の医学部増員政策の限界の一つは、成績中心の画一的な入試をそのまま残すことだ。3千人定員の定員を1500人増やしたところで、医師という職業に対する医学生たちの態度は変わらない。増員が現実化すれば、医学部合格ラインが2.9点下がると学校側は予想しているが、先輩より2.9点低い「次上位」の秀才が増えた定員を埋めるだけだ。必須医療を強化するには、診療報酬体系の改善が急務だが、医学生が社会的責任を内面化するよう入試制度も変えなければならない。医療の最前線で何年も患者と接した経験を成績と同じくらい高く評価する方向で医学部の門戸が広がれば、良いスタートになるだろう。