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奇異な家族の絵

Posted May. 06, 2021 08:14,   

Updated May. 06, 2021 08:14

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ベッドに横たわった母親と赤ん坊を描いた家族画だ。しかし、設定が奇異だ。寝具はもとより、壁まで全て白色で何の装飾もなく、布団の上に2人の顔だけ出ている。そのうえ、赤ん坊は母親から離れている。赤ん坊が母親に抱かれたり母乳を飲む姿が描かれるのが一般的なのだが。

ホアキン・ソローリャは20世紀はじめ、パブロ・ピカソが登場するまでは、生存する最も有名なスペインの画家だった。1863年にバレンシアで生まれたソローリャは2歳の時に両親をコレラで失い、親戚の家で育った。9歳で絵を習い始め、ローマに留学し、パリで印象主義を学んだ。25歳で結婚した後、マドリードに定着し、3人の子が生まれた。家族は最高のモデルとなった。この絵のモデルも、妻のクロティルドと後に画家となった娘のエレナだ。

ソローリャは浜辺の絵で名声を得たが、最も愛した主題は家族だった。孤児として育ち、家族の大切さを誰よりもよく知っていたので、ソローリャには常に家族が優先された。また、ソローリャの芸術的野望を実現させたのも家族の絵だった。ソローリャは、あらゆる慣習を破壊する革新的な絵を熱望したが、実際には大衆的人気と収入を保障する浜辺の風景画や伝統風俗画を描いた。しかし、この絵は違った。伝統的な母親と赤ん坊のイメージを大胆に破った。もし妻に娘を抱かせたり、母乳を与えるポーズを長時間取るようにしたなら、美しく見えるかも知れないがモデルには苦役だっただろう。娘は疲れて寝ついたように見える。母親と赤ん坊は最も平穏で自然な状態で描かれたのだ。

子どもは眠っている時が最も美しいと言ったものだ。眠る赤ん坊を眺める母親の表情は幸せそうに見える。画家は、母娘の顔に集中するために周辺を単純に処理し、黄色いタッチを加え、絵全体に温もりが漂うようにした。奇異な演出ではなく真の日常の場面である。