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世界を虜にした星の王子様の誕生記

Posted December. 14, 2019 08:13,   

Updated December. 14, 2019 08:13

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「大したものではありません。心に込めて持ち歩いている一人の小さなやつですね」

1942年、米ニューヨークのレストランで昼食をしていたサン=テグジュペリは、白いナプキンにいたずらに絵を描いていた。一緒に食事をしていた人が、彼に何を描くのかと尋ねると、彼はこのように答えたという。

彼が描いていた小さなやつは、後日「星の王子さま」になって、全世界の読者に会った。作品のあらすじと文学の意義をあえて説明するのは時間の無駄かもしれない。現在まで250以上の言語で翻訳され、1億冊以上が売れた名作の特別版「ガリマールエディション」が国内で翻訳出版された。来年は作家誕生120周年なので、なおさら意義深い。

「ガリマールエディション」は、フランス語の初版を出したガリマール出版社の名前を取った特別版だ。2013年、出版社は作品出版70周年を記念して、作家の人生と作品の誕生にスポットライトを当てた本を出した。

本は大きく三つの部分に分かれる。最初の章は、作家に関する新聞、イラスト資料、文献、手紙などをたくさん盛り込んで、作品の誕生過程に細かく触れた。第二章では、原作を移し入れ、最後の章では、いわば「星の王子さま」のファンであり、専門家と呼ばれるフランス語圏の教授、作家の評論が掲載されている。

興味深いのは、韓国でなかなか接しない資料を網羅した第一、第三章である。最初の章では、作家が描いていたイラスト、メモ、練習ノートから、彼が米国で活動する当時体験したエピソードと周りの人たちの証言がぎっしり詰まっている。サン=テグジュペリと交際していた米国の記者シルビア・ハミルトンは、「彼はまだ開始すらしていない『星の王子さま』の話を聞かせてくれた。サン=テグジュペリは私に、レビューと批判的指摘を頼んだ」と明らかにした。「作品の中に絵も一緒に描いて見ては」というアドバイスをしたハミルトンは、私たちが思っているよりも作品に大きく貢献したのかもしれない。

第三章では、学術的に作品の主題、関係、文明を論じたレビューが盛り込まれている。学術的だが、本の中のシーンを例に挙げて説明するので、すらすら読まれる。いざ作品が掲載された第二章が冷遇を受けると思うかもしれない。それでも心配する必要はない。他の章を先に読んだ後、自然に第二章に手が行く。美しくて童話的なイラストが、読む味をさらに向上させ、フランス文学専攻であり、美術評論家の翻訳者が付け加えた豊富な注釈が理解を助ける。


キム・ギユン記者 pep@donga.com