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彼は不当な指示に抵抗する「気難しい男」だった

彼は不当な指示に抵抗する「気難しい男」だった

Posted January. 09, 2021 08:15,   

Updated January. 09, 2021 08:15

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1冊の本の分量に近い180ページが過ぎてから、音楽の世界に堂々と出る準備ができた18歳のヨハン・ゼバスティアン・バッハの姿が現われる。そんなに膨大な本だが、大バッハの全貌を事細かく伝えるのが目標ではない。

著者は、英国の有名指揮者でモンテヴェルディ合唱団と管弦楽団「イングリッシュ・バロック・ソロイスツ」の設立者だ。この本では、バッハの声楽曲が持つ意味と魅力の紹介に集中している。カンタータ(独唱曲と朗唱風独唱、合唱などで構成された多くの楽章の声楽曲)と受難曲(福音書の内容をもとにイエスの受難を描写する音楽)二曲、そしてロ短調のミサ曲だ。ヨハネ受難曲とマタイ受難曲を扱った2つのチャプターを別に選んでも、1冊の詳細な学術書になるほどだ。

著者は、特にバッハのカンタータの中に作曲家自身の演奏の跡が刻まれており、これらの曲は教会暦はもちろん、農業暦や時事問題まで扱うと説明している。「この痕跡は自然の循環と季節に順応し、天使の間で過ごす来世を待ちわびながら浮き立っている誰かの音色だ。この本の副題(原語副題:Music in the castle of heaven、天国の城塞の音楽)が狙うことでもある」。

バッハという「人間」についても、既存の本以上の豊かな内容が含まれている。著者の目に映ったバッハは信実なルター派新教徒だったが、「気難しい」人間だった。教会の不当な指示に堂々と食ってかかった。とんでもない指示を出す聖職者たちには、音楽の中で同じ単語をうんざりするほど並べたり、楽器がキーキーと鳴る音を出すようにするなど、秘密のメッセージを隠して報復した。彼の反抗精神は、自分の音楽に新しい試みを導入させた。

合唱と独唱が調和した彼の声楽曲は、教会用音楽だけではなかった。「千回のキスより愛らしく、ワインより甘い」とコーヒーの魅力を賛美した彼の「コーヒーカンタータ」は、広く愛されている。当時、コーヒーハウスで開かれた音楽会は、18世紀後半に登場する公共コンサートの前身だった。バッハは、市議会の統制から脱して、ライプツィヒを代表する音楽監督としての地位を固めようとした。コーヒーハウスと教会はこれを実現する二大機関だった。


ユ・ユンジョン文化専門記者 gustav@donga.com