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[オピニオン]抜け出すための努力をしよう

[オピニオン]抜け出すための努力をしよう

Posted May. 17, 2014 07:54,   

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隣人の苦しみを共感する能力は人間に与えられた「神の聖品」の一つだろう。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)は、2001年の9・11直後、9月14日から16日にかけて成人560人を対象に電話インタビューを行った。その結果、事故発生地域のマンハッタンを中心にその近くに住んでいる人ほどひどいストレスを受けていることが分かった。事故地点から近い場合、20%が心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断された。事故の直接的被害者でなくても、間接体験による心理的傷を負う。

しかし、事故を直接体験した人の心理的な傷とは比較にならない。事故体験者は深刻な心理的後遺症からどうやって克服できるのか。

2003年、米国で1つの報告書が発表された。100台以上の自動車による玉突き衝突事故で生存した夫婦を対象にしたものだった。事故直後、夫婦は数分間車内に閉じ込められたが、この短い時間、別の車に乗っていた子どもが焼け死ぬおぞましい光景を目撃する。この夫婦は同じ状況にあったが、対応方法は違った。夫は車の窓を破ろうとするなど自分と妻が助かるために行動したが、妻は瞬間的に体が凍りつき、呆然と座っていた。

救助後、医療スタッフが事故を描写する文を読み、MRIを撮ってみると、夫と妻の脳は違っていた。夫の脳は前頭葉など多様な部位が活性化したが、妻の脳は非活性の様相が現れた。これは、事故後の克服にも影響を及ぼし、事故から6ヵ月で夫はPTSDが治ったが、妻は経営していた会社をあきらめるほど症状が深刻だった。

人は誰でも思いもよらない事故を経験する可能性がある。しかしこのケースは、事故をどのように受け入れて克服しようと努力するかによってPTSDも治ることを示した。夫の場合のように、極端な状況に置かれてもそこから脱するために努力するなら、症状の治癒に役立つ。しかし、夫人のように対応せずに屈する無気力さこそ、症状を長引かせる主犯となる。無気力を勝ち抜いて前向きに変化を起こすために行動することは、周囲も変化させるだけでなく自分自身をも根源的に治療する。

筆者が研究で会ったある脱北者を通じても、苦痛と無気力を克服するための前向きな努力の重要性を感じたことがある。彼は、北朝鮮での暮らしが地獄のようだったので、一時、北朝鮮に関するニュースも見ないほど北朝鮮に関することは無条件避けてきた。しかし、そうすればするほど苦しい記憶の亡霊がついてまわるようだった。北朝鮮に残された人々を助けるために故郷に向かって風船を飛ばすことを始め、北朝鮮が最後には変化するという期待を持つようになり、心の中の苦痛とうっ憤が少しずつ和らいだという。

今回の惨事を目の当たりにし、再びこのようなことが起きないよう不法と職務遺棄をした人を一罰百戒にしなければならないが、これだけで解決される問題ではない。

大韓民国が、国民の安全に十分に責任を負う国家にならない限り、国民的傷は癒えることはないだろう。それゆえ、今、心が向かうべきは、自分が立っている場所、各自の暮らしの場ではないだろうか。多くの「私」の集まりが社会だから、社会は拡張された「私」だ。韓国社会がより安全で責任ある社会になることは個人的な努力で始まり、これこそが本当の治癒になるだろう。

トルストイの言葉がある。「すべきことをしなさい。すべては他人の幸福のために、それは同時に自分の幸福のためだ」