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Kメディカルの前進基地「洪陵バレー」

Posted January. 17, 2014 03:03,   

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「ソウルを医療観光都市に作るため、多角的に検討を進めている」。朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長が9日、人間開発研究院主催の新年朝食会で思いがけない話を持ち出し、注目を集めた。朴市長は同日、韓国科学技術研究院(KIST)が位置するソウル「洪陵(ホンルン)バレー」をソウル医療観光産業をけん引する成長ベルトに作るという構想を明らかにした。

洪陵付近には1970年代に韓国の経済成長をけん引したシンクタンクが密集していた。ソウル市は韓国開発研究院(KDI)など政府系研究機関の地方移転が始まってから、用地の使い道について悩んできた。2年前、李明博(イ・ミョンバク)政府は、ここにグローバル・グリーン成長団地を建設する考えを発表したが、今は及び腰になっている。原点からの練り直しが求められるところだ。

洪陵に拠点を置いているKISTは、高齢化時代に合わせて「アンチエイジング」(老化防止)研究に力を入れている。近くには高麗(コリョ)大学医学部や慶煕(キョンヒ)大学の韓医学部、同薬学部、同医学部があり、生命工学や医療機器関連のベンチャー企業も多数位置している。立地環境だけを見ると、融合・複合産業である医療観光産業の成長ベルトにするのに十分相応しい場所だ。

中央政府レベルの決断が先決ではあるが、朴市長は、ここを医療観光産業の前進基地の場所として目星をつけているのだ。医師協会が医療民営化に反対してストに突入する動きを見せている状況下で、朴市長が言及した医療観光産業発展構想は斬新に見えた。ソウル市は、洪陵研究団地の発展方向を具体化するため、来月に調査研究を発注する計画だ。

洪陵バレーが、朴市長の構想通り、Kメディカルの前進基地になるためには先決課題も多い。韓国の医療技術は世界トップレベルにある分野が少なくない。診療報酬も主要先進国に比べて割安で、競争力がある。しかし医療観光を主力産業にしているタイ、インド、シンガポールも診療報酬は安くて医療技術のレベルは高い。

何よりも我々は、交通、宿泊、観光、通訳など医療以外のサービス分野のインフラが遅れている。インドは官民合同の特別チームまで設置し、医療観光の活性化に乗り出している。タイ、インド、シンガポールとの競争では負ける他ない要因だ。この3国と競争するためには、インフラ整備とともに医療観光の活性化を妨げる規制から打ち砕いていかねばならない。

医療観光は、日増しに資本集約的な産業への変貌しつつある。競争力をつけて、外国人患者を誘致するためには、数千億ウォン規模の投資を必要をすることもある。だが、韓国の大手病院は、数々の規制に縛られている。医療観光の活性化に役立つ立法の推進は、野党の反対に阻まれている。まともな競争ができるはずがない。

わが国の外国人患者誘致は、タイ、インド、シンガポールの10〜20%水準に過ぎない。中国の富裕層の医療観光客をソウルに呼び込むアイデアも練らなければならない。医療観光産業は付加価値と雇用創出の効果が大変大きい。2020年までに医療観光客を100万人に増やすためには、6兆ウォンを超える収入と21万の雇用を確保できるという。

金大中(キム・デジュン)、盧武鉉(ノ・ムヒョン)、李明博(イ・ミョンバク)政権下でも外国病院の誘致や営利病院の導入で医療サービスの質を高めよとする試みはあった。だが規制緩和の取り組みは、その毎回政治と保健医療団体の反発で頓挫した経緯がある。朴市長は市民運動家出身として野党党籍を持っている。進歩派と保守派の境界を崩すレベルから、彼が本気で説得していけば受けいられるかもしれない。

医療観光を支えるインフラ整備と基盤づくりも重要だ。しかし、より急がれているのは、民間病院が自由に能力を発揮できるよう、足を引っ張る規制から解くべきだ。市民運動家から行政家に転身した朴市長は、書生の問題意識と商人の現実感覚を体得している人だ。「何もしなかった市長として記録されたい」と言った朴市長だが、このことだけは例外にして欲しい。