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お粗末な検証を防ぐには民情首席と法務部の交通整理から

お粗末な検証を防ぐには民情首席と法務部の交通整理から

Posted May. 14, 2024 08:36,   

Updated May. 14, 2024 08:36

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「調べても調べきれないのが人事検証だ」

公職紀綱業務に精通した元大統領室行政官は、文在寅(ムン・ジェイン)政権当時、高位公職者の人事検証の失敗事例が相次ぐと、筆者にこう語った。大統領民情首席秘書官室が「査察」に準ずる調査を総括し、検察と警察、国家情報院まで総動員しても、一人の人物のすべての「経歴」を把握するのは容易ではないということだった。人事検証の失敗は歴代政府を通じて大統領の足かせとなり、李明博(イ・ミョンバク)(17人)、朴槿恵(パク・クンヘ)(10人)元大統領、文在寅(34人)前大統領は皆、国会が人事聴聞会報告書を採択できなかった人物を繰り返し任命する結果につながった。

尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が2022年5月の就任と同時に民情首席室を廃止し、法務部に人事情報管理団を新設して人事検証を任せた時、期待と不安が交錯した。法務部が人事検証をするのが適切かという記者の質問に、尹大統領は「米国はそうしている」と答えた。そして、「(大統領室は)公職者の不正情報を収集することはしない」とし、過去の政府で浮上した民情首席室の「査察問題」も解決するという意向を明らかにした。

最初に期待感を持った理由は、尹大統領が自信を持って答えた米国の場合、人事検証機関間の役割分担が徹底しているためだ。米国の人事検証システムは、公職候補者がホワイトハウスの事前検証を通過した後、各種質問に対する回答を提出すると、法務部傘下の連邦捜査局(FBI)がこれを引き継いで調査する仕組みだ。FBIが、候補者の家族や親戚、隣人や職場の同僚などを対象に相互検証を行った後、ホワイトハウスに報告すると、最終判断はホワイトハウスが下す。この過程で、FBIは適合や不適合などの判断や意見は一切出さないという。実際の検証はFBIが行うが、ホワイトハウスが人事検証を主導し、最終判断を下すよう役割分担が徹底されているのだ。

不安は結局、現実になった。現政権初の国家捜査本部長に任命された弁護士の鄭淳信(チョン・スンシン)氏は、息子の学校暴力問題により一日で辞退した。大法院長候補に指名された李均龍(イ・ギュンヨン)ソウル高裁部長判事は、非上場株を財産申告から漏らした疑いなどにより国会で任命同意案が否決された。お粗末な人事検証の論議が起こるたびに、法務部は、「人事検証資料を収集して大統領室に渡す役割だけを遂行する」と説明してきた。米国のように最終判断は大統領室が下すという反論だったが、民情首席がいない大統領室が最終判断をどのように下すのか、法務部がこの過程に介入する余地は本当にないのかなどはまだベールに包まれている。お粗末な人事検証の責任を法務部と大統領室のどちらが負うのかも不透明な状態が続いている。

尹大統領は7日、民情首席秘書官の復活と金周賢(キム・ジュヒョン)民情首席の任命を発表し、「民心聴取機能があまりにも脆弱だった」と明らかにした。しかし、大統領室は民情首席室の最も重要な業務となる人事検証業務を法務部とどのように分担するのかは明らかにしていない。法務部は今後も変化はないという立場だが、「王首席」と呼ばれる民情首席が復活した状況で、人事検証も大統領室に重きが置かれるという分析が支配的だ。もしそうなら、大統領室は人事検証業務を法務部とどのように分担するのか、「交通整理」からしっかり決めて国民に明らかにしなければならないだろう。お粗末な人事検証が繰り返されるのを防ぐには、まず責任所在を明確にしなければならないからだ。