Go to contents

猛獣と眠る女

Posted September. 16, 2021 08:39,   

Updated September. 16, 2021 08:39

한국어

満月の夜、一人の女が砂漠で眠っている。杖を手にし、そばにはマンドリンと水飲み瓶が置かれている。大きなライオンが彼女の香りに誘われて近づき、緊張感が漂う。女は果たして無事だろうか。

幅が2メートルを超えるこの巨大な絵は、シュルレアリスムの父と呼ばれるアンリ・ルソーの代表作。22年間、パリ市の税関職員を務めたルソーは、49歳で退職した後、画家になった。40歳から時折絵を描き、アンデパンダン展に出品したが、人々は彼を「ドゥアニエ(税関吏)」や「日曜画家」と嘲弄して認めなかった。絵を学んだことがなかったため、色彩や比例、遠近の表現が下手だったためだ。しかし、ルソーは自らを偉大な画家と信じて疑わなかった。写実的に似たように描くことはできなくても、対象を観察し、想像力を加えて独創的に描くことには自信があった。外国旅行はできなかったが、当代のどの画家よりもエキゾチックな主題を扱うことにも長けていた。パリの植物園や万国博覧会で見たエキゾチックな植物や動物が最高のモデルになった。ルソーが53歳の時に描いた絵の中のライオンや楽器、女の服も、直接観察して描いたのだろう。親しい友人のように描写された猛獣と女の肌の色のために、この絵はしばしばフランスのアフリカ植民地支配に対する比喩と解釈された。平和主義と保護者の仮面をかぶって近付く帝国主義を象徴しているということだ。

画家の意図は何だったのだろうか。ルソーの説明によると、絵の中の女はマンドリンを演奏するジプシーだが、疲れ果てて深い眠りについている。近づくライオンが女の匂いを嗅いでいるが、決して害は与えない。ほのかに照らす月の光が、ライオンと女の間の緊張感を平穏で童話的な雰囲気に変える。幸いにもハッピーエンドだ。もしかすると画家はいくら腹が減った猛獣でも寝入った餌には触れないという弱者保護のメッセージを伝えたかったのではないだろうか。

美術評論家