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米体操女王バイルスが棄権、マスコミは「彼女も人間」と応援

米体操女王バイルスが棄権、マスコミは「彼女も人間」と応援

Posted July. 29, 2021 08:39,   

Updated July. 29, 2021 08:39

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20歳で2016リオデジャネイロ五輪4冠に輝き、体操界の伝説となったシーモン・バイルス(24・米国)に対して人々が2020東京五輪で期待したのは「完璧」だった。しかし、バイルスは全冠制覇の始まりと考えられていた27日の女子団体戦で、誰も予想できなかった「棄権」を宣言した。バイルスは、「むやみに世間が期待することをやり遂げようとするよりは、自分の体と心を守りたい」と話した。

異常信号は、団体戦の跳馬の時から感知された。バイルスは1回転半だけ体を捻る低難度のユルチェンコ技術を試みたし、甚だしくは着地も不安だった。レベルが違う技術を一寸の動揺もなく成功させたかつての姿ではなかった。結局、バイルスは跳馬競技の直後に棄権を宣言した。米国は代替選手を出場させたが、2010年から五輪と世界選手権で席捲し続けてきた金メダルをロシアに渡して銀メダルを獲得した。

バイルスは、試合後の記者会見で棄権せざるを得なかった精神的な困難について打ち明けた。「午前に運動をするまでは大丈夫だったが、5時間ほど経ってから揺れ始めた。競技場に来てからは落ち込んでしまった。結局、自分の精神健康に集中して自分のための決定を下した」。

静かに答えを続けていたバイルスは、今の状態について質問を受けて結局涙を流した。「以前ほど自分が信じられない。年齢のせいか分からないが、体操をする時、もっと緊張するようになり、楽しさを感じなくなった。これがオリンピックで、これが私自身のためのものであることを望んだのに…。(涙)自分が愛することをするのではなく、他人を喜ばせるためのものになったようだ」と打ち明けた。

バイルスを「超人」(superhuman)と表現した米国メディアは、これまでの賛辞でバイルスが受けたプレッシャーの重さを認めた。CNNは、「何でもないように空中に飛び立ち、簡単に世界記録を更新できる人だが、彼女も結局人間」と伝えた。ニューヨーカーも「バイルスの棄権は大衆が彼女に期待したものではなかったかもしれない。しかし、選手自らの限界を認める姿は、次世代の選手たちにどのメダルよりも大きな影響を及ぼし得るという面で、もう一つの収穫だ」と評価した。

バイルスのようなスーパースターが五輪で棄権を宣言したのは異例のことだ。しかし、最近は「精神的プレッシャー」を堂々と明かす選手が増えている。バイルスが棄権を発表する数時間前には、五輪聖火の最終点火者として日本国民の期待を一身に背負っていた日本のテニススター、大坂なおみ(24)が女子シングルス3回戦で敗退した。なおみは今年5月の全仏オープンで、メディアのインタビューをボイコットして波紋が広がると2回戦で棄権し、2018年からプレッシャーで重いうつ病を患っていたと公開したことがある。

米国体操協会は翌日の28日、「バイルスが29日、個人総合も棄権することにした。勇敢な決定に拍手と支持を送る」とコメントした。バイルスが東京五輪の残り期間中に、再び立つことができるかどうかも不透明になった。協会は、バイルスの健康と精神状態に見極めながら今後出場するかどうかをを決めることにした。


任寶美 bom@donga.com