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あの人たちの罪

Posted July. 06, 2020 08:32,   

Updated July. 06, 2020 08:32

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子供の頃、喧嘩するたびに習慣のように「兄に言いつける」と言っていた友達がいた。町が小さなせいか、友達の兄はいなくても、いつの間にか風のように現れたが、その都度、三、四歳年上の兄の後ろに隠れる友達があまりにもうらやましかった。幼い気持ちで、母親に「兄を産んくれ」と言って叱られた友達もいたが、兄のいない私達にとって、兄とはいつ、どんなことに見舞われても、私の言葉を聞いてくれて、守ってくれるような、そんな人だった。

◆個人が自らを守ることができないとき、最後に訴えるところが国だ。昨年4月の晉州(チンジュ)マンション放火事件の遺族たちは、「今回の事件は、数回の通報にもかかわらず、これを放置した国家機関の責任だ」と主張した。住民たちは殺人鬼・アン・インドゥクの危険性について何度も警察などの関係機関に通報し、アン・インドゥクの家族までが関係当局への強制入院を要求したが、受け入れられなかった。最後の砦が背を向けた結果は悲惨だった。5人が死亡し、17人が重軽傷を負ったが、被害者の一人であるクム某氏は、娘と母親が死亡し、妻は重傷を負うなど、家族がめちゃくちゃになった。

◆先月26日、チーム監督などの暴行に耐え切れず、極端な選択をしたトライアスロンの故チェ・スクヒョン選手(22)が、6回も関連機関に陳情を入れたが、すべて生半可に扱われたことが明らかになった。今年2月、所属チームを運営する慶州(キョンジュ)市役所をはじめ、検察、警察、関連体育機関にまで訴えたが、新型コロナウイルスを言い訳にするなど、真剣に耳を傾けたところはほとんどなかったという。チェ選手は、亡くなる前日の先月25日も、国家人権委員会に陳情を入れた。20代前半の花のごとき選手が、最後まで生きるためにもがいたことを考えれば、あまりにも気の毒である。

◆この数年間、スポーツ界で暴行や性的暴行などの様々な不祥事が起きるたびに、政府は根絶対策を用意すると公言したが、効果はなかった。国会も同じだが、文化体育観光委員会が今日、全体会議を開き、真相調査と強力な後続対策作り、これまでの対策と機構がなぜ形骸化したのかなどについて点検するという。昨年1月、ショートトラック国家代表沈錫希(シム・ソクヒ)などのスポーツ界でのMeTooが起きた時、直接スポーツ界の暴行・不正の根絶対策を発表した人が、当時の都鍾煥(トジョンファン)文化観光部長官(現在は国会文化観光委員長)である。点検がきちんと行われたのか分からない。

◆チェ選手が最後に母親に残した言葉は、「あの人たちの罪を明らかにしてほしい」だった。母親になんの力があるだろうが、しかし、国家機関に背を向けられた20代の若者が、最後に訴えるところは家族のほかはなかったのだろう。「あの人たちの罪」になぜか、加害者だけでなく、切迫した訴えに耳を貸さなかった人々の行動までを含んでいるのはないかという気がして、気が重い。


李鎭求 sys1201@donga.com