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卵落とし大会

Posted February. 17, 2021 07:37,   

Updated February. 17, 2021 07:37

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卵が落ちればそうであるように、人間の心も時には割れて砕ける。韓国系米国人作家テイ・ケラーの「割れやすいものたちの科学」は、その割れと砕けることの苦痛を扱った感動的な小説だ。

話し手の12才の少女は、卵の落とし方大会に出場する予定だ。6~8年生(小学6年生~中学2年生)を対象に、科学的潜在力の発達を奨励するための興味深い大会だ。卵が割れないように3階から落とせば優勝者になる。以前なら、母親は喜んで助けてくれたが、今は違う。数か月前から母はうつ病を患っている。昔から知っていた母親はどこかにいなくなり、知らない人が母親の座についているようだ。少女は、母親の無表情な姿を見て、母親が自分を捨てたと考える。誰かにみじめな本音を打ち明け、泣きじゃくったりすればいいのに、少女はすべてを引っ込める。それで、母親のうつ病は少女のものになる。

それでも優勝したい。賞金でニューメキシコに行って、コバルトブルーの蘭を手に入れるつもりだ。錯覚だが、その花さえあれば、母が治るような気がする。しかし、準備していた卵が壊れ、計画は水の泡となる。いくら努力しても、卵が割れるのを防ぐことはできなかった。しかし、切実さと切迫さが通じたのか、母親のうつ病が、娘のものでもあったうつ病が少しずつ消え始める。

砕けることのない人生がどこにあるのだろうか。「心も卵も砕け、すべては変わるが、とにかく私たちは進み続ける」。少女が母親のクリスマスプレゼントとして買った「コリアンファイヤー」(韓国の花火)、すなわち椿が雪の中で花を咲かせるように人間は割れ、壊れても人生の炎を燃やす存在だ。もしかしたら試練のために、その花がもっと美しいのかも知れない。そういえば、作家は「従軍慰安婦」で全米図書賞を受賞したノラ・オクジャ・ケラーの娘だ。過去の苦痛を苦しく見つめる母と違って、娘は現在の苦痛を限りなく暖かく見つめる眼を持った。