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「かわいそう?異なる人生を生きているだけ」ホームレス論文作成で70日間体験

「かわいそう?異なる人生を生きているだけ」ホームレス論文作成で70日間体験

Posted September. 11, 2010 03:04,   

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今年冬、ソウル駅のホームレスの間に一人の若いホームレスが混じっていた。40、50代のホームレスらと一緒に暮らしながら70日間を過ごした「20代のホームレス」は今、このように語る。「町のホームレスをただ無能力で意志の欠けている存在やかわいそうな人と見るこれまでの視線に対し、『必ずしもそうではない』と話したかったのです」。

9日、ソウル東大門区回基洞(トンデムング・フェギドン)の慶熙(キョンヒ)大学・地理学科の大学院研究室で会った金ジュンホさん(29)は、今年1月1日から3月13日にかけての72日間、修士論文の作成のため、ソウル駅でホームレスとしての生活を送った。同期間、金さんが、「命の危険」を感じ、自宅で寝た期間はわずか5日間だった。

金さんは、ソウル駅でのホームレス体験を終えた後、「町のホームレスが生産する差異の空間を巡る研究—ソウル駅のホームレスを中心に」というタイトルの論文を書き上げ、先月、慶熙大学で修士号をとった。

ホームレスを眺める社会の見方が間違っているのではないかと疑問を感じ、「小心な反抗」を決心した。ホームレスを巡るこれまでの研究を探したものの、研究者の立場で、アンケートの作成や口頭面接を通じてまとめたものがほとんどだった。金さんは、更生施設や保護施設の関係者らの話を聞くより、直接彼らの世界に飛び込むことにした。

ホームレスになる過程は容易ではなかった。携帯電話はもとより、録音機やカメラを持ち込むことができなかった。トイレに隠しておいたノートに、3、4日に一度の割合で書き込み、添い寝をした。家族には公衆電話で、「生きている」ことを知らせた。正月ごろは、ほかの地域から渡ってきたホームレスらと、救援物資の取り合いのため喧嘩をしたこともある。若い上イケメンの金さんは、自分が性的暴力の対象になりかねないと思って、ホームレスらが眠るまで待った後、1、2時間ぐらい寝るのがやっとだった。

金さんは、ソウル駅のホームレスである「チェ兄さん」や「コートの姉さん」、「金カンジ」などと交わした会話や日常生活を分析し、論文に載せた。「ただ、異なるという理由だけで、間違っていると主張する社会に対し、見方を変えるだけのきっかけを作りたかった」。氏は論文の中で、ただホームレスなために、公共スペースから排除されざるを得ない現実について批判した。市民らが集会を開き、公演を行う公共の空間が、ホームレスにとっては、主流社会が作り出した「支配の空間」になってしまったと分析した。

72日間出会ったホームレスは計80人余りに上り、このうち8人は、集中的な分析対象となった。論文では、「主流社会が持っている偏見から脱し、町のホームレスを眺める新しい視線が必要だ」と結論付けた。しかし、金さんは、「実践的な代案を見つけることができなかったことは、限界だ」と残念がった。

金さんは、ソウル駅を離れた後、すまない気がして、一緒に暮らしたホームレスを再び訪ねることができなかったと打ち明けた。ひょっとすると、彼らを傷つけるのではないか、怖かったという。今後も、社会の少数者らがどうすれば公共空間で、自分らの権利を取り戻すことができるのかについて研究を続ける計画だ。金さんは、ホームレス生活に終止符を打った感想をこのように話した。

「これまで自分の物差しだけで、ホームレスが気の毒だと思ったのが、一番すまなかったと思います。ただ、彼らは異なる人生を生きているだけなのに」



coolup@donga.com