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K文化ブームに乗って、隠れた宝石「隠れたチャンピオン」が浮上

K文化ブームに乗って、隠れた宝石「隠れたチャンピオン」が浮上

Posted March. 21, 2024 08:32,   

Updated March. 21, 2024 08:32

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「デビューできるとは思いませんでした。何年も諦めていたので、とても嬉しかったです」

ネットフリックスの映画「ロ・ギワン」を演出したキム・ヒジン監督(38)は5日、記者懇談会でこのように話した。長い苦労の末、初の長編映画の監督になって感無量だという感想を明らかにしたのだ。キム監督は、「修学旅行」(2010年)など短編映画3本を演出しただけで、長い間シナリオ作家として働いた。2017年に「ロ・ギワン」の演出を提案されたが、キャスティングと投資問題で作品制作は遅々として進まなかった。

しかし、ネットフリックスが投資を決め、俳優の宋仲基(ソン・ジュンギ)の参加を引き出し、制作は急激に進んだ。「ロ・ギワン」は1日の公開後、ネットフリックスの非英語圏映画部門で1位となっている。脱北者の人権問題を取り上げ、国際的な注目を集めたことによるものだ。キム監督は、「日の目を見るまで、とても長くかかった。演出家としてデビューする機会は簡単に訪れるわけではない」と話した。

最近、世界的なK文化のブームに力づけられ、韓国コンテンツ業界で「隠れたチャンピオン」が浮上している。韓国国内ではあまり注目されなかった新人クリエイターたちが、海外で注目を集めている。ネットフリックスによると、2022~2025年に披露された韓国オリジナルコンテンツ5本のうち1本は新人監督の作品だ。例えばミン・ホンナム監督は、短編映画「病院にでも行きます」(2005年)を演出しただけで、主に演出部のスタッフや助監督として働いたが、今年初めに公開されたネットフリックスのドラマ「ソンサン-弔いの丘-」を演出した。今年1月に公開されたネットフリックスの映画「荒野」のホ・ミョンヘン監督も、武術監督やスタント俳優として働き、監督として初めてデビューした。

「ソンサン-弔いの丘-」や「荒野」ともに、忠武路(チュンムロ)ではメガフォンを握ることができなかった監督たちが、オンライン動画サービス(OTT)プラットフォームを通じて海外への進出機会を得た事例だ。ネットフリックスのテッド・サランドス共同最高経営者(CEO)は、先月19日訪韓し、「新人監督たちが、ネットフリックスを通じて世界中を舞台にデビューしている」と話した。

これは、OTTがクリエイターの名声より作品性に注目するため可能になったことだ。Kコンテンツの人気に支えられ、作品さえ良ければ投資が活発に行われる構造となっている。俳優の宋仲基は「ロ・ギワン」の記者懇談会で、新人監督の作品に参加した理由について、「シナリオを見るわけで、監督が誰かを見て作品を選んだりはしない。もう有名な人が作ったからといって作品を見る時代ではない」と話した。

文学でも、「隠れたチャンピオン」の創作者たちが日の目を見ている。大韓出版文化協会によると、ソウル国際図書展の知識財産権(IP)の相談件数は、2022年の115件から昨年は944件へと、わずか1年間で8倍以上急増した。イチョウ出版社のチュ・ヨンソン代表は、「昨年、ソウル国際図書展で海外出版社40社と商談を行ったが、このうち60%以上がうちの本を買おうとする商談だった」とし、「海外出版社にとって、ソウル国際図書展はこれまで本を売りに来る所だったが、今年は買いに来る所に変わった」と話した。

キム・ウィギョン氏の長編小説「ハローベイビー」(2022年・銀杏)は、英国や米国、ドイツ、イタリア、オランダでの出版を最近確定した。韓国国内で広く知られている作家ではないが、米国の版権は、北米最大の出版社であるランダムハウス系列のホガースブックスに売られた。ホガースブックスの編集者は、キム氏に電子メールを送り、「今日、米国など色々な国で女性として感じる問題に関心が高いが、『ハローベイビー』はこれをうまく取り上げていたので気に入った」と書いた。世界的に人口減少の現象が起きている中、不妊病院で会った30代や40代の女性の悩みを盛り込んだことが、アピールしたのだ。イチョウ出版社のイ・ジンヒ取締役は、「人口減少のトレンドと小説のテーマが合致していたので、海外で反応が熱い」と話した。

新人作家パク・ソヨン氏の長編小説「スノーボール」(2021年・チャンビ)は、米国や英国など10ヶ国に版権が売れた。未来の酷寒期にドームで囲まれた暖かい地域で起こる出来事を描き、気候危機に関心の高い海外読者の目を虜にした。チン・ボラ氏の長編小説「メモリーケア」(2023年・イチョウ)は、米国や英国での出版を控えている。人工知能(AI)で作ったディープフェイクの偽ニュースが国内外で議論になっている中、真実と偽りを区別しにくい未来を描いた本の内容が欧米圏読者の興味を引いたのだ。「メモリーケア」を海外に輸出した国際文学エージェントのバーバラ・ジートワー氏は、「今後は、クリエイターの名声よりは、作品内容の普遍性や作品性がコンテンツの成功を決めるだろう」と説明した。


イ・ホジェ記者 hoho@donga.com