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みんなを笑顔にしたフーバオ、君のことを忘れない

みんなを笑顔にしたフーバオ、君のことを忘れない

Posted March. 13, 2024 07:33,   

Updated March. 13, 2024 07:33

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「リーリー! リーリー!」

2016年1月、中国四川省の「ジャイアントパンダ繁殖研究基地」。18年ぶりに会ったパンダのリーリーに、飼育員のカン・チョルウォンさんが叫んだ。1994~98年にカンさんに育てられたリーリーは、まだ「パパ」の声を覚えていた。リーリーは顔を上げ、ゆっくりとカンさんに近づいてきた。周囲にいた中国の関係者らは、「あなたが本当の『シュンマオ ババ(パンダのパパ)』だ!」と叫んだ。

リーリーが韓国の地を離れてから18年後の2016年、アイバオとラバオのカップルが韓国にやってきた。それから4年後、「フーバオ」が生まれた。こうして「パンダのおじいさん」カンさんとフーバオの日常が始まった。

「龍仁(ヨンイン)のプーさん」「プー姫」など様々な愛称で呼ばれ、韓国で大きな愛を受けたフーバオを4年間世話した飼育員が、これまでの忘れられない思い出と未公開写真を盛り込んだエッセイ『私は幸せなフーバオのおじいさんです』を出版した。フーバオに対する高い人気のお陰で、同書は教保(キョボ)文庫が8日に発表した3月第1週のベストセラー総合1位にランクインした。購入者の89.2%が女性と集計された。同書には、エバーランドで37年間働いたベテラン飼育員の動物に対する温かい視線が盛り込まれた。

フーバオは、韓国で自然繁殖で生まれた初のパンダだ。パンダは通常、生後40日前後で目を開ける。しかし、フーバオは左目は生後15日目、右目は18日目で開いた。このままでは視力に問題が生じかねない。そこで、カンさんは約2ヵ月間、分娩室の電気を消してフーバオの視力を保護し、最終的に健康な視力を持つことができた。フーバオだけでなく、出産後遺症で食欲を失って苦しんでいた母親のアイバオのために、栄養価の高い竹の葉に柔らかいタケノコを包んだ特製料理まで作った。

フーバオの成長記録はまるで育児日記のようだ。生後120日目に初めて四つん這いになって歩くと、涙を流して祝福する姿や、夕方の屋外遊び場で遊び続けようと駄々をこねる姿は、人間の普通の家庭と変わらない。

カンさんは、フーバオが木登りができるようになるなど立派なパンダに成長したのには、アイバオの役割が大きかったと話す。フーバオが高い木から落ちたり驚いたりすると、いつもそばに駆け寄ったが、フーバオを無理やり木に乗せることはしなかったという。フーバオが自ら学び、習得するよう育てるアイバオの姿を「支持と信頼の育児法」と名付け、人間に与える教訓が大きいと強調する。

フーバオの「小さなおじいさん」と呼ばれる飼育員のソン・ヨングァンさんも、昨年11月に『全知的フーバオの視点』を出版した。本の片面にはフーバオの写真が、もう片面にはフーバオの視点で書かれた日常の記録がウィットに富んだ文体で書かれている。「私は猛獣の身体構造と臓器を持って生まれましたが、肉の代わりに植物である竹を食べて生きています。そのため、消化力が悪いです。他人は私を怠け者だと言いますが、生きるために食べることと寝ることを精一杯繰り返さなければなりません。人生において熾烈でない野生動物はいません」など、野生動物パンダの特徴をフーバオの視点で理解することができる。

フーバオは来月3日、中国に行く。「フーバオ、本当にありがとう、愛している。そして、幼い頃に一緒に過ごしたおじいさんを少しだけ思い出してくれるかい」というカンさんの心のこもった告白は、フーバオを愛したすべての人に大きな感動を与える。


柳原模 onemore@donga.com