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ある日本人牧師の43年にわたる悔い改め

ある日本人牧師の43年にわたる悔い改め

Posted March. 08, 2024 08:46,   

Updated March. 08, 2024 08:46

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数日前、近所の教会での主日礼拝での出来事だ。八十歳を過ぎた老人が講壇の下に降りてきて、突然膝をついて礼をした。瞬間、静まり返った聴衆の間に重い沈黙の空気が漂った。老人は年月の重みに耐えかねたようにゆっくりと体を起こし、講壇の後ろに立って、やっとの思いで口を開いた。声はか細く、全身は震えていた。

「日本が韓国を侵略し、皆さんに苦痛を与えたことをお詫びします。日本人牧師が聖なる韓国の教会で説教できるなんて、あり得ないことです」

韓国に赴任して43年目のソウル日本人教会の牧師、吉田耕三氏だ。吉田氏が初めて韓国に赴任した1981年は、すでに韓国のキリスト教徒の数が日本よりはるかに多い時だった。吉田氏は同日の説教で自分の派遣理由を「韓国人に謝罪するため」と語った。そして、「心を尽くし、精神を尽くし、力を尽くして、あなたの神、主を愛しなさい。あなたの隣人をあなた自身のように愛しなさい」というマタイ福音書の言葉を説教し、最も近い隣人を侵略した日本の罪を悔い改めた。

今月1日で3・1運動105年を迎えたが、日本政府と有力政治家たちの過去の反省はまだ遠い。日本の歴代首相の中で最長期政権に成功した安倍晋三元首相は、最近、韓国語に翻訳出版された『安倍晋三回顧録』で、1995年の村山談話を誤りだと言い切った。日本の首相の中で初めて韓国植民地支配を謝罪した政府の公式立場を事実上否定したのだ。韓日両国間の不幸な歴史を克服し、未来志向的な関係へ進むことを決めた98年の「金大中(キム・デジュン)・小渕宣言」は、村山談話を土台にしてできた。これでも日本は、韓国の「慰安婦賠償判決」をめぐって政府間の信義を口にすることができるのだろうか。

安倍氏は回顧録で、「日本は過去に何度も謝罪してきた。『何度も謝罪させたらもういいだろう』という考えがあった」と書いている。実際、日本の極右政治家だけでなく、最近、国内の一部からも「もう謝らなくてもいいのでは」という声が上がっている。しかし、歴史の反省に時効はない。侵略の歴史を少しでも忘れると、第1次大戦勃発から25年後に第2次大戦が起こったように、歴史の悲劇が再び起こる可能性があるからだ。

このような文脈で、安倍氏が回顧録で「(村山談話は)まるで日本だけが植民地支配をしたかのように書かれている。当時の国際情勢に対する視点が欠落している」とし、「戦前は欧州と米国も植民地支配をしていたではないか」と抗弁したのは特に懸念される。 西側列強もやったのに、なぜ私たちだけなのか」という安倍氏の態度は、第1次大戦に続いて第2次大戦を起こしたドイツ人の認識体系に似ている。

1919年6月、ドイツに戦争賠償責任を規定した「ベルサイユ条約」が締結されると、当時のドイツ人はイギリス、フランスなど欧州列強にも戦争の責任があると憤慨した。そしてアルザス・ロレーヌ返還などに対して過度な懲罰だと反発した。しかし、ドイツはその1年前に内乱で弱体化したソ連を圧迫し(1918年のブレスト=リトフスク条約)、バルト3国やグルジアなどの領土を強制的に奪った。  

日本はドイツの前轍を踏まないためにも、「和解はプロセスであり、一度で終わらせず、被害者が痛みを忘れるまで許しを求めなければならない」という吉田氏の言葉に耳を傾ける必要がある。