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尹錫悦大統領に望む

Posted May. 10, 2022 08:47,   

Updated May. 10, 2022 08:47

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第20代尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領時代が開かれた。尹氏は今日の就任式から5年間、大韓民国を率いることになる。祝福する。就任式のスローガンは「再び大韓民国、新しい国民の国」。成長エンジンが冷えた国家経済に活力を吹き込み、敵味方に分かれて中傷する自害国家でなく、共に手を握って未来に向けて走る統合国家の礎石を築くことを願う。

 

しかし、尹錫悦政府の前に置かれた政治状況は容易ではない。大韓民国は今、1番に入れた国民と2番に入れた国民に二分されている。国民の半分ほどは依然として新政府に心を開いていない。発足時の新大統領に対する国民の支持がここまで低いことがあっただろうか。5年で政権を明け渡した「巨大野党」の「共に民主党」は、その隙に乗じて雪辱を晴らす機会を狙っている。

経済・安全保障の現実はどうか。荒波そのものだ。米中貿易戦争や新型コロナウイルス感染症、ウクライナ戦争などが重なり、冷戦終息後約30年間続いてきた世界化、自由貿易パラダイムは崩壊しつつある。グローバル経済危機の中、高物価・高為替・高金利など「3高」が韓国経済を押さえつけている。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記は、ミサイル挑発などを続け、虎視耽々と尹錫悦政府の安全保障能力をテストしようとしている。複合危機の状況で、尹氏は「大韓民国号」の無限の責任を負うことになった。

 

国家エネルギーを一ヵ所に集めて対内外の危機と挑戦に対抗していくことは、尹氏の役割だ。いかなる哲学とビジョンを持って、どのような人々と共に国家を運営するのか「リーダーシップ」の問題だ。尹氏は公正と常識、憲法価値、自由民主主義の守護などを強調してきた。これらの価値が理念対決で流されてはならない。国益、実用の価値と調和を作り出さなければならない。公正の原則と実用の柔軟さは時に相反するかもしれないが、その調和のとれた追求が国政を成功に導く近道だ。保守を標ぼうする尹政府だ。興奮と情熱ではなく、分析と代案で漸進的な改革を成し遂げなければならない。前政府の失敗から学ばない国政運営は、さらなる失敗を招くことを自覚すべきだ。

 

大統領選という政治戦争が終わって2ヵ月経った。戦争が終われば、将軍も馬から降りなければならないが、尹氏はまださらなる戦争をしている。当選後、尹氏は妥協と意思疎通の政治力ではなく、決起と強行の闘争力を前面に出した。「帝王」にならないと言ったが、牽制と批判を嫌う「小王」の姿を見せたのではないか振り返らなければならない。国政は正面突破、勝負師の気質だけでは通じない。原則は守るものの、我執に映らないよう警戒する必要がある。

そのような点で、尹氏が1期内閣の構成や大統領府参謀陣の人事などで見せた検察出身者の重用、特定大学や地域偏重、同窓など親交のある人の起用といった人事スタイルは懸念される点が多いのが事実だ。人事が万事というのは古今東西に通ずる真理だ。「共に民主党」の意地悪と妨害は批判を受けなければならないが、自身の決定に誤りはないという態度を固守することも望ましいことではない。過去の事例でも見るように、国民に対抗する政権は成功しないということも肝に銘じなければならない。

弾劾後、多くの支持を受けて発足した文在寅(ムン・ジェイン)政権も、5年が経って苦々しく退場した。陣営に閉じこもった「半数のための」大統領だったためだ。5年後、政権を延長しようが、明け渡そうが、尹政府としては「権不五年」だ。国民が呼んだ大統領であっても、その国民には、熱心な党員と支持層だけがいるのではない。分権と統合、協治を追求しなければならない。言葉のように容易ではない。それでも、政治の復元は、結局は大統領次第だ。野党との意思疎通に昼夜を問うてはいけないだろう。大統領にはあらゆる情報が集まる。情報独占にともなう独善と傲慢を警戒しなければならない。「龍山(ヨンサン)」との空間が本質ではない。聞きたくない話を聞き、国政にも反映する意思疎通と傾聴が重要だ。

 

当面の難題はやはり経済だ。何より韓国経済の成長潜在力を修復することに力を入れなければならない。韓国の長期成長率は1990年代初めから5年に1ポイントずつ下がり、新政府が終る時ぐらいには0%台に落ちるという懸念の声まで出ている。去る政府5年間で毀損した財政の健全性も回復しなければならない。国民と約束した年金改革も、文政権のように無責任に避けることはできない。激しい国益の現場で生存の座標を見出すことも尹政府の課題だ。世代問題、ジェンダー問題、地域問題、階層問題などあらゆる矛盾が噴出することだろう。

すべき事は多く、行く道は険しい。最終的には「政治」の問題だ。「半分の内閣」でスタートしたが、野党のせいにしてばかりはいられない。正直なリーダーシップで、国民を説得すること以外に方法はない。進歩と保守が敵対的共生ではない共生的共存ができるよう統合の基盤を作らなければならない。言葉のない中道の心を推し量ることが、その道を模索する方策だ。国民の信頼を得ることも蔑視の対象になることもわずかの間だ。政治初歩の大統領だが、新しい国家リーダーシップを示す機会が来た。